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捜査立会人 ~オブザーバー~  作者: 如月いさみ
SNS探偵 天馬

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運命の始まり 2

 父親の仕事仲間だった大間正明という弁護士が両親の生命保険や持ち家などを含めた遺産の受け取りの手続きを行ってくれた。

 有明正一との約束通りに遺産は自分と弟と折半する形になった。


 税金対策や大学資金も必要だろうと持ち家を売って賃貸で暮らすことを勧められ、言われるままに賃貸で一人暮らしをして1年後に高校を卒業した。


 誰も喜んでくれる人のいない……寂しい卒業式であった。

 たった一枚有明正一から弟の天加の少し大人びた文字で書かれたハガキが届いた。


『俺はおじさんと頑張ってるから兄ぃもがんばれ。卒業おめでとう』

 マンションでそれを見て涙が溢れた。


 その寂しさの代わりに巨大な権力の上層部に復讐を誓ったのである。


 3年が経ちSNSでは大きな騒ぎが起きていた。

『すっげー、事件現場に突撃して実況って……しかも言っている通りじゃん』

『21世紀の名探偵って奴だよな~』


 3カ月ほど前から動画配信サイトで注目を集めているⅤチューバ―探偵のコメント欄である。


 そこに映っているのはスラッとした20代の顔の整った青年で『SNS探偵 天馬』と名乗っていた。


 彼がコメント欄で書かれている21世紀の名探偵であった。


 秋晴れの9月。

 青空が広がる東京都心のマンションに規制線が張られ警察官が慌ただしく中へと飛び込んでいた。


 品川西警察署刑事課強行犯係の新米刑事である坂本蒼矢は同じ強行犯係の古株刑事の杉田善一に連れられて現場に入り玄関からシンクやガスコンロのある短い水回りの廊下を抜けて12畳ほどのLKで倒れている女性を見て両手を合わせた。


 女性の名前は松田貴子でこの部屋の主で一人暮らしであった。


 テーブルの上にはワイングラスが一つ。中には赤い液体が入っている。それに毒物が入っているということであった。


 カーテンは引かれたままで他には乱れた様子もなく彼女の死因はワイングラスの中の毒による中毒死であった。

 窓は閉まっており戸の鍵も閉まっていた。


 また合鍵はなく鍵自体は窓際の机の上に置かれた吸い殻入れの前に置かれていた。


 所謂、密室である。


 坂本蒼矢は女性を一瞥してスッと立った杉田善一の顔を肩越しに見上げ

「杉田さん」

 と呼びかけた。


 杉田善一はチラリと坂本蒼矢を見下ろし

「坂本、お前はよっく被害者を見ておけ」

 と告げた。


「は、はぁ?」


 蒼矢はそう答えて

「いやいや、杉田のおっさんこそちゃんと見て新米の俺に教えてくれなきゃだろ? それとも俺試されてる??」

 と心で突っ込みつつ、女性の様子を見た。


 刺された痕はない。

 死因に繋がるような外傷を見当たらない。

 しかも密室。


 だが。


 女性の衣類や足元などをじっくり見ながら蒼矢は僅かに目を細めた。

「この手頸と二の腕の圧迫痕……気になりますね」


 それに杉田善一は口の端を上げると

「お前はどう考える?」

 と聞いた。


 蒼矢は先輩刑事の言っている意味が分からず

「え?」

 と返した。


 杉田善一は耳元に口を近付け

「自殺か、他殺か」

 お前ならどう初動するか? そういうことだ、と告げた。


 蒼矢はハッとすると

「やはり試されているのか!」

 と判断すると

「部屋は密室ですし、ぱっと見では自殺ですが……俺なら先ず他殺を疑います。やはり、この二の腕と手首の圧迫痕が気になります」

 と告げた。


 杉田善一は顔を離して立ち上がると

「これは自殺だ」

 と告げた。

 そして周辺で遺留指紋など調べている鑑識班に

「分かっているな、この件は自殺だ。採取の方はそれで行うように」

 と呼びかけた。


 蒼矢は思わず立ち上がると

「はぁ!? 杉田のおっさん!!」

 と言いかけた。


 それに重なるように声が響いた。

「ここは品川西警察署管内の品川リバーサイドマンションLの403号室・松田貴子さんの部屋で本人の遺体が発見されたとの通報により警察が現在遺留品採取を行っている現場です」


 携帯を自身に翳して20代くらいの青年が慌てて外へ出そうとする警察官を軽々と避けながら姿を見せた。


 スラリとした長身に整った容貌。正に映える青年であった。

 蒼矢は思わず立ち上がると

「おい」

 と声を上げかけて杉田善一に腕を掴まれた。

「アレはSNS探偵天馬って奴だ。やらせろ」


 杉田善一はそう耳打ちするように言いSNS探偵天馬を捕まえた警察官に

「あー、放っておけ。後々問題になる」

 と手をピラピラと払って告げた。


 天馬は彼を見ると

「『自殺』と即時判断した刑事さんの割りに気前がいいみたいですねー」

 と言い

「では、これまで通り推理をご披露いたしましょう!」

 と告げた。


 蒼矢は驚きながら

「は!? 何なんだこいつは」

 と顔を顰めて睨んだ。


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