全貌 8
天加は頷くと
「この計画を成り立たせようとすると一つは三嶋さんに怪しまれないように両側の住人を入れ替える必要がある。例えば一気に両側が変わると三嶋さんは不審を抱くだろうし警察も目をつける」
と言い
「だから数か月時間を空けて入れ替える必要があるけど、元々人が住んでいたらその人物を追い出さないといけないだろ? オーナーなら出来ると思うんだ」
と思う。
哲二は驚いて
「はぁ!? まさか相手はマンションごと買い取って計画したって事か?」
と叫んだ。
天加は頷いて
「それだけの価値があのUSBの動画にはあったんだ。あの動画は鈴木翔代議士を中心に日本の司法を乗っ取ろうとしている組織が存在していることとその重要人物が恐らく全員映っているってこと……鈴木翔代議士の背後の巨大組織を悟られてしまうものだったんだ」
と告げた。
「それこそ日本の人間一人の死などなかったことにできるくらいの力を持った組織」
強くはないが粛々と告げる天加の何処か冷静とした声が余計に哲二の足元を凍らせた。
「こ、怖いわ!! 天埜! その言い方、俺の心が凍るわ!」
……。
……。
天加はガクブルと震える哲二をみて目を瞬かせた。
「的場……探偵」
それに哲二はフゥと息を吐き出して
「的場だろ、探偵はいらねぇって!」
と言い
「お前って時々圧が凄すぎる」
とヒーと両手で身体を摩った。
だが、天加の言葉が怖いのはそれが『眉唾』でないからだと哲二は分かっていた。
哲二は腕を組み
「だが、二人の防犯カメラの映像だけでは二人を捕まえることはできないな。最も松田健太はもう捕まっているけど、あの須藤朋美って管理人はかなり頭のいいやつだと俺は思う。結局、あの事件だって証拠はないし、俺たちは本人たちと他の事件で遭遇した上にあの動画も見ていた。それが無くてただ防犯カメラの映像だけしか見てなかったら須藤朋美を疑う事はなかった」
と告げた。
天加は頷いた。
「確かにそうだな。だが人のすることに完璧はない」
そう告げた。
「ただ時が不完全を完璧に偽装してしまうだけだ」
残っていた痕跡や記憶は時間が経つと消え去ったり曖昧になってしまったりして証拠としての価値を失っていく。
その事により完全犯罪が成立してしまうことがあるのだ。
天加は息を吐き出して三嶋夜の事件の方の調書を手にした。
彼女もまたほぼ同じ状態で殺され部屋が荒らされていた。
哲二は冷静に
「理由は、同じだよな」
と呟いた。
USBのデータだ。
恐らく手口も同じなのだろう。
調書には怪しい指紋はなかった。
だが。




