全貌 5
「桐谷警部、ご連絡通りに三嶋兄妹の事件の資料をこちらに用意いたしました。それから、私が当時三嶋真昼については担当しておりましたのでお待ちしておりました。三嶋夜については管轄が違っていましたので何かあればそちらに連絡取れるように担当者は聞いております」
中野中央警察署刑事部強行犯係長の真辺新一という人物であった。
キリッとした様子は真面目そうに天加には見えた。
哲二もまた
「手を抜くような人間には見えないな」
と天加に小声で囁いた。
天加は頷くと
「あの、三嶋真昼さんの調書から見ていいですか?」
と聞いた。
真辺新一は頷き
「ご自由に、何か質問があればお答えします」
と答えた。
世名は頷くと
「じゃあ、頼む」
と告げて
「俺は推理が得意じゃなくてな。何かあればそこの内線で連絡をくれ」
と立ち去った。
他の面々の状況を収集して警察庁長官と次長につなぐという仕事が世名にはあったのだ。
天加は息を吐き出し
「よし、やるか」
と調書を手に目を通し始めた。
事件は3年前。
中野駅近くのマンションで一人暮らしをしていた三嶋真昼が刺殺体となってリビングで発見された。
発見したのは彼の妹の三嶋夜で前日の夕方に電話を入れたら夜に電話をすると言ったきり連絡がなかったので仕事前にマンションに寄り発見して警察へと連絡を入れたという事であった。
窓は閉められていたが鍵は掛かっていなかった。
「凶器も残ったままだった。つまり誰でも殺しが出来た状態だったってことか。両隣の住人が夜中の1時頃に激しい音がしたという話と検死で死亡推定時刻が夜中の1時頃で合致している」
それに真辺新一がパソコンを動かし
「そうなんですが、近隣の防犯カメラにもマンションの出入口の防犯カメラにもその前後の時刻に出入りする人間が写っていなかったんです」
とマンションの防犯カメラの映像を写した。
管理人が午後5時になると管理人室に鍵をかけて出ていく姿が写っていた。
「管理人は午後5時に退勤しています」
天加は真辺新一の説明に頷いた。
その後、会社帰りなのだろう男性が4名と女性が1名入って行くのが写っていた。
しかし、それは午後7時から9時の間で後は静寂が広がっているだけで翌日の朝に三嶋夜が入って行く姿が映るまで誰も通っていないのが分かった。
哲二がそれに
「けど、このマンションの裏口やこの防犯カメラに映っていない場所に抜け道があるとかってないのか?」
と聞いた。
真辺新一は頷くと動画を二つ並べて写した。
「右がマンションの向かいにあるコンビニの防犯カメラです。左がマンションの裏手にあるマンションと向かい合うようにあるコインパーキングの防犯カメラです」
午後5時にマンションの正面のコンビニの動画に帰っていく管理人の姿があり、マンションと同じように帰っていく住人の姿が写っていたが横手の路地から抜ける人も反対側の駐車場の防犯カメラにもそういう人間は映っていなかった。
つまり、怪しい人間の出入りはなかったという事だ。




