迷宮のダイイングメッセージ 4
哲二はニッと笑うと
「推理は三流だが俺は人の動向を推し量るのは一流だと自負してる」
と告げた。
「それだけじゃぁ、本当は探偵なんて出来ねぇけどな。けど推理小説の探偵に憧れていたんだよな」
坂本蒼矢は笑むと胸元から財布を出して
「じゃあ、これで頼む」
と5万円を置いた。
「本来ならもっとだがな。手持ちがなくてな……すまない」
天加は慌てて
「いや! それは、俺……困ります」
と金を押し返しかけて哲二に止められた。
哲二は天加を見て
「貰ってやれよ。無料は無責任の代名詞だ。ボランティアだ、善意だってのは何時切られても文句の言えない行為だ。責任は相手に何かを受け取ってから初めて生まれるモノだ」
と言い
「それに捜査立会人になったのは俺や先の井上って奴のようなダメ探偵や警察が真実に辿り着けない不幸やそれが生んでしまう冤罪を回避するためなんだろ?」
と言い
「だったら、そうやって迷宮化した事件を助けてやったらいいじゃねぇか?」
と告げた。
天加は哲二を見つめた。
最初は唯の目立ちたがり屋の出来の悪い探偵とも呼べない人物だと思った。
だが違ったようである。
天加は笑むと
「人の本当は付き合ってみないと分からないモノなんだな」
と言い、5万を手にすると
「わかりました、必ず坂本刑事の義兄さんの死の真相とその暗号解いてみせます」
と告げた。
坂本蒼矢は大きく頭を下げた。
「頼む」
天加は頷いて
「そのために協力を願うかもしれませんが宜しくお願いします」
と告げた。
天加は調書を手に静かに視線を落とした。じっくりペラリペラリとページを捲り、読み始めた。
事件は3年前に起きた。
三嶋真昼という男性が自宅マンションで殺されているのが発見されたのだ。
部屋は荒らされ遺体の手には血の付いた携帯が握られて、そこに意味不明な打ち込みがされていた。
更に打とうとしていたのか下の半分には英字のテンキーが表示されていた。
その意味不明な打ち込みこそが今回坂本蒼矢が依頼してきた暗号である。
内容は矢印と『872わ1562』の1行だけであった。
『← ←
↑
872わ1562 ・
・
→ ←』
こういうことだ。
哲二も覗き込んで目を見開くと
「は? これが暗号か? パッと見てわかるのって872わ1562だけだな。郵便番号……とかじゃないよな」
とぼやいた。




