もう一人の捜査立会人 7
彼女の前に立ち聞き込みを終えた少し縒れた上着を羽織った中年刑事が肩を竦めながら天加に軽く手を上げ
「よ、久しぶりだな」
と声をかけると
「鑑識は飴から毒物は検出されていないと言っている。いや、今のところ何処からも毒物が検出されていないし、毒物による中毒死かどうかすらまだわかっていない。解剖結果を待たないと病死かどうかも分かっていないということだ」
と告げた。
天加は会釈して
「お久しぶりです。坂本警部……でも、確か品川西警察署だった気が」
と聞いた。
天加が捜査立会人になる前の海津隆夫の事件で出会った坂本蒼矢であった。
坂本蒼矢は笑むと
「まあ、警察は組織集団だ。移動はある」
と手帳を見せた。
警視庁刑事部所属に変わっていたのだ。
井上昭二はフゥと息を吐き出すと口元を歪めながら
「あのなー、そういう悠長なことをやってるから事件を事故だ、病死だと迷宮を作るんだよな」
と腰に手を当てて告げた。
天加はあっさり
「なるほど」
と答えた。
財前理人はチラリと天加を見て
「それで、先の井上探偵の発言、決めつけ感が強く探偵として問題だと思うが、捜査立会人としてどう思う? 天埜君」
と聞いた。
天加はそれに
「現段階では事故、事件、病気などのパターンでも考えられるし警察側の発言なら問題だけど探偵としては問題ないと判断してます」
と答えた。
「……つまりこの井上探偵は事件として調べると言っている。それだけです」
財前理人は目を見開くと
「なるほど」
と答えた。
「つまり、正確性は二の次ということか」
井上昭二は顔を歪めると
「はぁ!? その俺の見立てが間違っているって断定しているって事か?」
と告げた。
天加は冷静に
「上田英恵さんが犯人と言う見立てについては捜査立会人として問題ありと判定していますが、警察が先に彼のその見立てをへし折ったので問題なしと判断しました」
と言い
「そう言う意味でいうと井上探偵、俺は貴方の見立てが間違っていると断定しています。ただ……事件という点では現在の時点で判定の正誤は出せないということです」
と答えた。
ドきっぱりと推理が間違っていると言い切ったのである。




