44/76
もう一人の捜査立会人 3
講義を受けていた誰もが明日からの夏休みに少し気を抜いていた空気の中を浅見慎二がスルーと席の間を抜けて姿を見せた。
「……良かったですね、もう終わりで」
言外に『依頼です』と言ってきたのだ。
天加はふっと笑みを浮かべると溜息を零して
「すみません、ありがとうございます」
と答えて立ち上がった。
既に慣れてしまっている同期の面々はチラリと天加を見ると親指を立ててグッと送り出しの合図を送ってくれている。
「頑張れ!」のエールだ。
ありがたいものの天加は心で涙を流した。
「あと10分後にしてほしかった。そうしたら終了の合図と共にでれたのに」である。
そう思いながらも迎えに来た浅見慎二と共に講堂を後にした。
まるで馬車に乗せられて売られて行くあの歌のあの子牛の気分だ。
外はまるでその歌の情景を醸し出すかのように青い空が広がり静かな陽光が地上を照らしている。




