もう一人の捜査立会人 1
夜の闇が東京の街を包み込む。
都心は東京駅を中心に一日中光が溢れている。
所謂、不夜城という奴だ。
行き交う人も日中ほどではないが少なくはない。
天埜天加の家は文京区の中でも簡素な住宅街の一角にある。だが、それでも夜の9時であっても街頭は明るく家の前の道路には車の往来があった。
天加は二階の自室から前の道路をぼんやりと見下ろしながら今日の事件のことを考えていた。
加藤忠司が中島幸次を殺害したことは本人の自供やその後の裏取りから確実であった。
動機は加藤忠司が杉尾公男に言った『売上金の横領』。
同僚で同じ営業の中島幸次は売上金の上乗せに気付き加藤忠司に忠告をしようと呼び出したのだ。その同僚への親切心が殺人へと結びついてしまったという事である。
河川敷の土と草については杉尾公男の居た多摩川河川敷に殺害後に加藤忠司が採取していたことがその近くの防犯カメラで分かった。
加藤忠司が犯人であることは間違いない。
だが。
天加は机の前に勉強用のタブレットを立てて息を吐き出した。
「加藤忠司が言った彼にそのトリックを与えた人物については誰か分からなかったんだよな」
この事件にはもう一つ裏がある。
加藤忠司に場所移動トリックを誤認させるトリックと言う知恵を授けた人物が分かっていないということだ。
SNSのアカウントは既に削除され残っていたIPアドレスも海外経由で追い切れなかった。つまり、加藤忠司以上に計画的に行われた犯罪だったという事だ。




