動き出した闇と相棒 14
だが。
だが。
天加は不意に苦笑を零すと
「いや、俺は探偵じゃなくて立会人」
と心で突っ込んだが口には出さなかった。
そこには先ほどまでの威圧的な天埜天加ではなく何時もの天加の姿があった。
それを見ていた管理人の須藤朋美は「ほぉ」と呟き沈黙を守った。
加藤忠司は連行され、的場哲二は「またな」というと立ち去った。そして、天加は送致の為に裏取りや現場検証に動き出した刑事達を見送り佐藤美見の車でマンションを後にした。
佐藤美見は車で天加を送り
「真実を明らかにしてもらい感謝する。正しい答えを出していたのに誤った方に行きかけてしまった」
と告げ、天加の家の前につくと
「しかし、君なら警察や探偵の歪みを正す『捜査立会人』にふさわしいと俺は思う。また、このままそうなっていってもらいたい」
と笑みを浮かべ
「この恩は何時か」
と天加が車から降りるとアクセルを踏んで立ち去った。
その時、家の戸が開き母親の有明加奈子が姿を見せた。
「天加、帰ってきたのね。友視君から連絡があったので待っていたのよ」
……お帰りなさい……
天加は振り返るといつもの笑顔を浮かべた。
「ただいま、お母さん」
そう言って踵を返すと家の中へと入っていた。空は夕刻の茜の色を広げ、太陽はビルとビルの間に沈もうとしていた。
その宵闇の光景を東京から近いタワーマンションの一室から男が一人見つめていた。
男はワインを手に『管理人』を演じていた須藤朋美から報告を受けていた。
「捜査……立会人か」
須藤朋美は頷くと
「はい、警察関連の人間だとは思いますが、警察組織の人間ではないようです」
と告げた。
「これから捜査立会人というモノを調べる予定ですが……しかしあのトリックを見破り論破するとは」
そう苦く笑みを浮かべた。
男は須藤朋美に
「かなり推理力があるという事だな。そうならば敵対せずに呼び込むのも手かも知れんが」
と呟いた。
須藤朋美は男の背中を見つめ
「どちらにしても捜査立会人と天埜天加の背後も調べておきます」
というとすっと立ち去った。
男は口角を上げて
「……返事次第という事だな」
と小さく呟いた。
その視線の先には陽が落ちた夜の闇が広がっていた。




