動き出した闇と相棒 12
天加は人が変わったように冷徹な表情を浮かべると
「それで無実の人間をネットリンチにかけるのか!! お前は『犯人に用意された結末』を掴んだだけだ」
と強い口調で断言した。
更に佐藤美見を見ると
「佐藤警部! 多摩川河川敷で殺害した後にすることは何だ! 言え!!」
と怒鳴った。
一気に空気が変わった天加に佐藤美見は息を飲み込み
「そ、それは遺体を……運ぶことです」
と告げた。
天加は目を細めて佐藤美見を横目で見て
「その時、遺体を布でくるん運んでもトランクに入れたり後ろの座席に寝かせても必ず血は仰向けに倒れた時とは違う状態になるのではないのか!!」
と強い口調で告げた。
「それは衣服の血や血痕だけじゃない! まだ分からないのか!!」
佐藤美見も的場哲二も同時に目を見開いた。
「「死斑」」
天加は二人を一瞥し、口角を上げるとゆっくりと加藤忠司に目を向けた。
「そう、布にくるんだり車のトランクに入れたりすれば死斑は通常の仰向けで倒れた状態とは変わってくる。それに出血の量や衣類の付着も変わる」
加藤忠司は蒼褪めながら立ち尽くした。
天加は冷めきった瞳で
「多摩川河川敷の草や土などは後で拾いに行ける。貴方はだから二人に電話を入れて居場所を確認した。そう、場所移動トリックならば『杉尾公男さんが貴方に』電話をする。だが、電話をしたのは貴方だ。罪を擦り付けやすい人間のいた場所の土と草を採取して遺体のズボンの裾につけることで遺体を移動させない遺体移動トリックを作り上げた」
と言い
「残念ながら、貴方は自分のトリックが完璧だと思うあまりに貴方以外には犯人で有り得ない証言をしたことになるんです」
と告げた。
「貴方の利用している車や靴などを調べさせてもらいます。反対にタイヤや靴底などに貴方が多摩川河川敷に行った証拠が残っている可能性がある」
加藤忠司は慌てて足元を見た。
誰一人口を開く者はいなかった。
天加の気に圧されて声が出せなかったのだ。
佐藤美見が重くのしかかる様な圧迫感の中で
「朝井さん」
と呼びかけた。
朝井紀夫も床に張り付いたような足を無理やり引っぺがすように足を踏み出すと加藤忠司の前に立った。
「調べさせてもらいますよ。車に付着している土や貴方の靴全てを」
加藤忠司は周囲を見回し
「お、俺は……こういう方法なら……他の奴に罪を擦り付けられると言われて」
と片膝をついて崩れ落ちた。
天加は目を見開くと
「誰に、ですか?」
と聞いた。
それに僅かに管理人の須藤朋美が目を細めた。
加藤忠司は俯いたまま
「それは……SNSでしか……」
と呟いた。
朝井紀夫は加藤忠司の腕を掴むと
「署まで来てもらおう。それも含めて聞かせてもらう」
と連行した。
的場哲二は震えながら
「良くも恥をかかせて」
と呟いた。




