捜査立会人 3
有明正一は何処か納得したように息を吐き出し
「桐谷さんか」
とぼやくと
「だったらそれは本物だ」
と苦く笑って天加を見つめると前髪を軽く撫でた。
「天加、お前の好きにしなさい。もしヤル気がないなら俺が断ってやる。命を懸けても断る。翔君も天加の自由を望んでいるからきっと力になってくれる。けどな、もし本気でやろうと思うならやりなさい。どちらでも天加の望む方を選びなさい」
……それが俺たち夫婦と翔君の望みだ……
有明加奈子も頷くと
「そうよ! 私も天加が選んだ道を全力で応援するわ!」
と笑顔で告げた。
天加は大きく頷くと
「父さん、母さん。ありがとう」
と答え
「俺、まだどういう仕事か分からないから迷ってるけど……思っている仕事ならやってみようと思う」
と告げた。
「警察官僚になって警察の不正や隠蔽を排除しようと思ってた。それだけの力を持つくらいになるように頑張って上に行こうと東都大の法学部に通ってるし。でも世名さんはこの捜査立会人は探偵の探偵。警察の第三の目だって言ってた。それが不正や隠蔽を阻止するものなら……そういう仕事ならやってみたいと思う」
天加の中にも両親の死の隠蔽による傷が深く刻まれている。
当時、17歳だった兄が両手をついて今の父に自分を託した日の事を忘れたことはない。
『お願いがあります。弟の面倒をお願いします! 遺産は全て弟に渡します。そして、俺は二度と弟にあいません!』
……両親の死の真相を白日の下で明らかにしたいんです!! ……
今の父はその日に自分を連れて今の家に帰り実の子のように育ててくれた。
天加は真っ直ぐ有明正一を見つめ、頭を下げた。
「父さん、母さん。そう言う訳で……今回の仕事を受けようと思います」
有明正一は息を吐き出すと、笑みを深めた。
「そうか。探偵の探偵。警察の第三の目……大変だぞ。でも、天加が決めたのなら、頑張れ。応援する」
そう告げた。
天加と天埜翔の両親は殺人を自損事故の死亡として警察官僚の圧力によって書き換えられた。まだ一介の交番員だった自分に止める力はなく目の前でその不正を見つめるしかなかった。
今も胸の奥で残っている。
17歳だった天埜翔が全ての絡繰りを知りながらどうしようもない絶望の表情で事故現場に立ち尽くしていた姿を。
12歳のこの天加が何も知らずに両親の死を前に泣き続けていた姿を。
贖罪の意味もあって天加を育てることにしたのだ。
全てを知って結婚した有明加奈子も二人の手を強く握りして
「そうね、天加ちゃんがヤル気なら私も正一さんと全力応援するわ」
桐谷さんはチョット胡散臭い人だけど貴方を陥れる人じゃないから、ところころと笑った。
それには天加も有明正一も思わず吹き出して笑いを零した。




