捜査立会人 2
一か月前のことであった。
「俺、警察法人捜査立会機構の捜査立会人になった」
天埜天加の宣言に驚愕したのは彼を育ててきた有明夫妻であった。
有明家当主の有明正一は会社では男前社員で通っているその顔を見事に崩して
「はぁ!? 何だそれは!? 俺が警察官だった時にそんなものなかったぞ!? 一体なんなんだ! それは!?」
と声を上げた。
有明正一は元警察官であった。と言っても勤めていたのは3年ほどで天加の両親が亡くなった事件が切欠で依願退職をして会社員となった。
なので、警察内部のことを全く知らないわけではない。
それでもそんな機構の事を聞いたことがない。
彼の妻で有明家を取り仕切る有明加奈子もまた天加の襟首を掴むと
「ちょっと、ちょっと! 大丈夫なの!? その話を持ってきたのは知ってる人なの?? 天加ちゃん!!」
と行動とは裏腹に愛らしい声で叫んだ。
姿も声に負けず劣らず34歳のわりにアイドルに近い可愛さを保っている主婦だ。
二人はダイニングキッチンの中央で12歳の時に引き取りそれから息子として育ててきた天加を前に同時に
「「特殊詐欺かも知れないからその話を持ってきた人を連れてきなさい!!」」
と見事なユニゾーンで告げた。
天加は指で耳栓をしつつ冷静に
「そりゃ、驚くよなぁ~。普通はこの反応だよ」
とぼやき
「一応、これ」
と国家公安委員長の津村清也と警察庁長官の止々呂美修也の名が連名で書かれた任命書を見せた。
「それから、この話を持ってきたのは世名さん。ちゃんと挨拶に来るって言ってた」
有明家夫婦はへなへなとその場に座り込んだ。桐谷世名は有明正一も加奈子も良く知っている人物である。
天加の兄・天埜翔の知り合いで時々だが翔の代わりに天加の様子を見に来ていた。
天加の兄である天埜翔は二人の両親の死が様々な権力によって隠蔽され、その真実を明らかにするために日本の一部を大きくひっくり返した人物である。
その過程で当時不正を止めるために動きたくても動けなかった警察官や国家公安委員の人間など国の中枢に近い人物と繋がりを持つことになり現在も彼らと協力して仕事をしている。
考えれば天加の後ろには天埜翔という兄が存在し、そういうことがあってもおかしくはなかった。
最も、天埜翔が天加にそんなことを押し付けるとは有明正一も加奈子も思ってはいない。
ただ天加は中学時代の親友・花畑友視に手を引かれて探偵まがいのことをして事件を解決しているので、その能力を天埜翔の周辺の人間が見過ごすわけがないだろうとは思っていた。
「天加の能力は翔君の力に拮抗するからな。翔君は別としても周りはほっとかないか」




