捜査立会人 1
何のためにこの存在が生まれたのか。
忖度だらけで隠蔽・不備が横行する警察に対するものか。
インプレッション稼ぎの為に嘘の推理でネットリンチの的となる犯人当てをする探偵に対するものか。
「けど、そんなものどうでも良い。真実に辿り着いているか、いないか。大切なことはそれだけだ」
天埜天加は探偵と刑事が向き合う中でスッと手を上げると
「捜査立会人の権限で警察に指示を出します」
と告げた。
……今すぐ、DNA鑑定をしてください……
湖面を打ったように静寂が天加を中心に広がり全員が彼を見た。
天加は動かない警察官たちに向くと
「捜査立会人は警察の上にある! 動け!!」
と強い口調で怒鳴った。
「それともできない理由があるのか! 誰かの私兵で無ければ動け!!」
それにその場の指揮を取っていた刑事の近本忠雄がムッと不満に口を開きかけた。
瞬間であった。
天加を後押しするようにその場で一人腕を組んで平静に状況を見ていた警察庁刑事局職員の桐谷世名がふっと笑みを浮かべた。
「近本刑事、急げ」
……捜査立会人は不備があると認めたならば警察庁長官にも指示を出せる……
それこそが警察の第三の目。
探偵の探偵。
警察法人捜査立会機構である。
近本忠雄はグッと拳を作ると桐谷世名の方に向いて一礼し、現場採取をしていた鑑識班に指示を出した。
「DNA鑑定を……するように」
警察機構が様々な権力バランス均衡が崩れ各地で忖度による隠蔽が横行し始めたことを危惧し、新しく警察第三機関として立ち上げた何処からも圧力を受けない警察法人捜査立会機構が姿を見せた最初の現場であった。
国家公安委員会や各都道府県公安委員会の圧力もない。
どの機関も圧をかけることのできない警察唯一の独立行政法人。
上層部や外部権力に忖度する警察に対する第三の目。
ミスリードやレッドヘディングを乱発する探偵たちの探偵。
それが捜査立会人であった。
外では青い空が東京の天上を覆い、白い雲が何処へ流れるのかを告げることも無くフワフワと渡り歩いていた。




