捜査立会人への誘い プロローグ 12
事件の全容が明らかになり中津川和夫に医務室で報告を終えた天加は礼を言って立ち去る彼を見送り、親友の友視に
「そう言えばさ、俺、捜査立会人の候補に挙がってるって世名さんに言われた」
と告げた。
友視は天加を見て
「何それ?」
と問いかけた。
事件を引き連れては来るが事件解決に関しては全くのド素人なのだ。もちろん、ふんわりとした知識で探偵や警察を知っているがその現実を知っているわけではない。
取りあえず事件を解決する人程度の認識である。
天加はジト目で見つめ返し
「いやいや、花畑ってそういう奴だよな」
と自身を納得させつつ
「世名さんが言うには探偵の探偵で、警察の第三の目って言ってた。圧のない警察とも言ってた」
と告げた。
「俺は警察官僚になるつもりなんだけどな」
友視は頷きながら笑い
「確かに天加は前々からそう言ってたな」
と笑みを向けると
「俺は天加がどの道を選んでも良いと思う。天加の望みがどれなら叶うのかを考えればいいと思うぜ」
と告げた。
「探偵の探偵。警察の第三の目……そして、圧のない警察か……って警察って圧あるのか!?」
天加はそれに苦笑しつつ
「あるよ、そう……ある」
と目を細めた。
育ての父である有明正一は正にそれによって警察を去ったのだ。自分の両親もまたそれによって死を隠蔽された。
権力の圧力によってだ。
「俺は警察官僚になって圧に負けない力を持って不正や隠蔽を排除したいと思ってた。真実を真実として明らかにしたいと思ってる」
と告げた。
友視は静かな声で
「でも、警察庁長官だってさ。その上に国家公安委員がいるだろ?」
と告げた。
「その圧は警察の頂上でもかかってる。でも上のない国家権力を持つ捜査機関だったら」
天加は目を見開いて友視を見た。
「もし世名さんがそう言う意味で言っているのなら……そう考えると」
友視は笑みを深めて
「やってみたい? それとも警察官僚って言葉に執着ある?」
と聞いた。
天加は戸惑いつつ
「俺は……肩書にこだわっている訳じゃないけど」
と呟いた。
話をする二人の目の前の窓には夜へと向かう空が浮かび上がっていた。
同じ時、世名は東都ハイアットリージェンシーホテルの展望レストランで食事をしながら警察庁次長の島本蓮司に
「国家公安委員長から反対はなかったんだろ?」
と告げた。
島本蓮司はワインを口に運び
「ああ、止々呂美がその時の動画を見せると天加君の『推理力』に満足していたよ。それに天埜氏の弟さんだ。不正や隠蔽を憎む思いも強いだろうと言っていた」
と笑みを浮かべた。
「国家公安委員長は国家や政財界の権力で封印された過去現在未来の迷宮を解放してくれるかもしれないと……期待もしている」
……その為の警察法人捜査立会機構だ……
「そうで無ければ意味がない」
二人の会話はざわめきに搔き消され誰の耳にも届くことはなかった。
それから一か月後に天加は捜査立会人の一歩を踏み出したのである。




