捜査立会人への誘い プロローグ 11
世名は息を吐き出して天加を見ると
「天加くん、君はどう思う? これまでいくつかの事件を解決してきた。実力はあると俺は思っている。そして君の両親のこと」
と告げた。
「上からの圧による忖度と面倒ごとを回避しようとする警察。インプ稼ぎの無責任な推理の探偵。そんなものが齎すのは迷宮の中で笑う真犯人と悲劇だけだと俺は思っている」
……厳正な捜査が行われているか。正確な推理がなされているか……
「いま警察の第三機関プロジェクトを始動させようとしている。国家組織の一つだが警察でもなく国家公安委員のような上もない捜査機関。独立した探偵と警察の第三の目」
……警察法人捜査立会機構。捜査立会人、オブザーバープロジェクトだ……
「俺はそのメンバーに君を推そうと思っている」
天加は驚いて世名を見た。
「はぁ……でも、俺はその……探偵になりたいわけじゃないんだけど」
そう呟いた。
「警察官僚になりたいって世名さん知ってますよね?」
世名は笑むと
「ああ、君のご両親の死が隠蔽され事故で処理された。それを君のお兄さん……天埜氏が3年かけて全てを白日の下に暴き出した。だから君は警察官僚となってそれを止める仕事をしたいと思っている」
だろ? と言い
「ただ、捜査立会人は君のお兄さん天埜氏の思いから生まれたプロジェクトだ」
と告げた。
「警察と同等の力も持ちながら全ての圧力から切り離された第三機関で正しく警察が機能しているか。探偵が悪意を持って現場を混乱させていないかを見極める」
……俺はこれこそ君が望んでいる仕事ではないかと思っている……
「考えておいてくれ」
まあ、気にかかるものがないわけではないけどな、と世名は心の中で呟いた。
先ほどの天加の豹変ぶりだ。
それが吉と出るか、凶と出るか。
「天才ゆえか、そうでないのか……だな」
天加は世名の話に驚きながらも小さく頷いた。
「兄さんのプロジェクト」
兄は自分と同じ思いを持ちながら自分とは違う方法を考えていたのだ。
中津川和夫から頼まれた事件は警察の再捜査で管理人であった田中岩夫が犯人と確定した。
また彼の供述により海津隆夫と濱川修一と宮田健一は何ら犯行原因には関係なかったことも判明したのである。
このロッジを選んだ中田晋と佐々木健二が中学1年の頃に田中岩夫の子供を虐め、それが原因で妻の静江と毎日喧嘩をして最終的に暴力を振るわれた静江が二人を置いて実家へ戻ったのである。
『息子が引きこもり何て同僚に知られたら!! 恥ずかしい!! 静夫も静夫だ! 男のくせに!!』
それが田中岩夫の口癖だったらしい。
その言葉が息子である静夫を引きこもりにしたのではないかという話もあった。
事件後に田中岩夫の息子は母親の実家に引き取られ自分の事で父親が犯した罪を聞いてこのままではダメだと少しずつだが外へ出るようになったということである。
海津隆夫の冤罪も明らかになり探偵チューバ―の小和泉治夫が田中岩夫から金を受け取り、また多くのインプレッションが手に入ると言われ適当な推理をしていたことが分かり殺人ほう助と侮辱罪などに問われることになった。
当然ではあるが彼の推理を信じる者はいなくなった。




