捜査立会人への誘い プロローグ 9
そして閉じると
「その後、被害者たちは用意されていた飲み物とコンロを用意する。バーベキューを中でしたのはしたと思います。虫も多いですからね。でも彼らはきっと窓を開けていたと思いますよ」
と窓を開けた。
「しかし、飲み物に仕込まれた睡眠薬で彼らは眠りに落ちる。それを見計らって犯人は零れた睡眠薬入りの飲み物を回収し床なども拭く。全員寝ていて誰もいないんだ余裕だったと思います」
それに坂本蒼矢は蒼褪めながらチラリと田中岩夫を見た。
天加は表情を消したままコンロの前に行き
「中身を練炭に変えて火をつけ網をそのまま乗せて如何にも室内バーベキューをしているようにセットして窓を閉めて回り」
と窓を閉めて回り戸口へと向かった。
「そして鍵をして管理室にこのスペアキーを戻して頃合いを見計らって扉を開けてさも電話で気付いたように慌てて警察に連絡を入れます」
……単純で簡単な密室トリックですね……
坂本蒼矢は蒼褪めて田中岩夫を見た。
「まさか」
田中岩夫は慌てて
「いやいや、何故俺が? 俺はただの管理人ですよ」
と告げた。
天加は頷くと
「今はまだ貴方はただの管理人だ。だが……これから貴方の背後を調べます。それで関係が無ければ貴方はそう言うことです。だから、俺達三人だけでしました」
と告げた。
「なので、貴方の背後を徹底的に調べさせていただきますね」
天加は鍵を見ながら
「ただこの鍵はシリンダー式ではなく簡単に合鍵は作れない。貴方もそう断言していたし、メインはあのカウンターテーブルの上。しかも、貴方は残りの一つのスペアキーをずっと管理していたと言っていた」
と告げた。
「冷蔵庫の飲み物。鍵。そして受話器が外されてからの通報のスパン。全てを自由にできたのは貴方だけなんですよ。貴方以外に犯行は無理なんです」
……管理人がいつも事件に無関係な『第三者』とは限らない……
「徹底的に調べさせてもらいます。それで貴方が彼らと全く関係なければもう一度調べ直します。探偵チューバ―からどうしてここへタイミングよく来たのかも含めて」
田中岩夫は大きく息を吐き出すとストンと座り視線を逸らして
「中田晋と佐々木健二は……中一の頃に俺の息子を虐めて不登校にしやがった。お陰で妻とは息子のことでぎくしゃくして俺と息子を置いて出て行った。息子は未だに……人生の道を踏み外したままなのに」
と告げた。
「奴らはへらへら笑って青春を謳歌している。許せるわけがないだろ!!」
世名と坂本蒼矢はチラリと天加を一瞥した。力づくで止めることは出来る。ただそれ以上に彼がどう反論するかも見ておきたかったのだ。
止むに止まない犯罪もある。だが犯罪はどんな理由があったとしても許してはならない。
それが司法に関わるものの定めなのだ。
感情的に不本意、不憫、様々な思いが過るだろう。だが、それでも司法に関わる者は犯罪者に引導を渡す覚悟が必要なのだ。
現在、警察内部で重要なプロジェクトが動き出そうとしている。
すでに国家公安委員会の承認も取れている。その人員である。
世名と坂本蒼矢はその人員の選出側の人間として任命されていたのだ。
だからこそ……天加がこの状況をどう持っていくか興味があった。
「さあ、警察庁長官肝入りのプロジェクト、捜査立会人の資質があるかどうか見させてもらうぜ、天加ちゃん」
世名はそう心で呟き目を細めた。




