捜査立会人への誘い プロローグ 7
天加は冷静に
「俺が気になったのはこの現場に飲み物が一つもないということです。焼肉の焼かれていない肉や野菜はテーブルの上にある。だが、飲み物はテーブルの上にもそれこそ冷蔵庫にもない」
と言い、室内の写真をそれぞれ指で示しながら説明した。
確かに冷蔵庫にもテーブルにもカウンターやシンクの何処にも飲み物はなかった。
「こういう場なら外だろうと中だろうと飲み物があったと思う。それがないのがおかしい。ロッジの中の冷蔵庫にすらないのは異常としか思えない」
と言葉を切った。
そして一息ついて笑みを浮かべると
「ああ、それに俺も簡単に密室作れますよ」
と付け加えた。
坂本蒼矢は目を細めると
「はったりとかじゃぁ……ねぇみたいだな」
と天加を見た。
天加は立ち上がり
「現場に連れて行ってください」
と告げた。
坂本蒼矢はチラリと世名を一瞥して考えたものの
「いいだろ」
と立ち上がった。
彼は天加と世名を駐車場に連れて行き自家用車に乗せると走らせた。
奥多摩川の緑の深い山林の一角にロッジはあった。
天加は現場につくと周囲を見回した。
「あの時のままですか?」
坂本蒼矢は「ああ」と答え
「中は整理されているかもしれないがこのロッジについては取り壊しが決まったみたいだから放置だろう」
と告げた。
天加は足を踏み出して坂本蒼矢からビニール手袋を受け取るとノブを回して中へと入った。
まるで時を止めたような状況で白いテープと網と牛肉が撤去されたバーベキューコンロが残されていた。




