捜査立会人への誘い プロローグ 5
天加は直ぐに飛んできた桐谷世名の車に乗って警察庁が入っている合同庁舎へと向かった。
「大学の講義が残ってたけど、明日他の奴に聞くか」
そう考えて桐谷世名と共に17階にある応接室に入った。
桐谷世名は応接室に入ると扉を閉めて
「それで? どの事件を調べたいんだ?」
大学から緊急電話は一度や二度じゃないから予測はついている、と告げた。
天加は全てお見通しと言った具合の彼に
「あー、何時もすみません」
と頭を下げて
「先週の土曜日に起きた多摩川ロッジ練炭事故の資料です。警察では事故扱いですよね?」
恐らく、と告げた。
世間はともかくとして警察はよほどのことがない限り『事故』と判断したものを『事件』と切り替えたりはしない。
世名は笑むと
「ああ、その通りだ」
と答え
「少し座って待ってろ」
というと部屋を出た。
天加は応接室の長テーブルの椅子の一つに座りぼんやりと周囲を見回した。親友の友視が事件を引っ張ってきてからこの部屋を利用するようになった。
「まあ警察官になりたいから警察庁の一角に足を踏み入れるのは本望なんだけど……でもこれって探偵でってことだからそこが悩ましい」
う~むと思わずうなり声を上げた。
瞬間に扉が開くと世名が段ボールを手に入ってきたのである。
「これだ」
天加は慌てて立ち上がり
「すみません」
というと段ボールを受け取り長テーブルの上に置いた。
調書に現状の写真から遺留物などが入っていた。天加はそれらを取り出すと一つ一つ丹念に目を通した。
何時ものことだがその段に至ると世名は椅子に座り口を開くことは全くしない。つまり準備は手伝うが推理は手伝わないということである。
簡単に言うと情報屋の立場に近いのかも知れない。
そして、警察庁で勤めながらそれが許される立場の人間なのだ。




