捜査立会人への誘い プロローグ 4
多摩川上流のキャンプに参加した5人の学生がロッジの中で倒れた状態で管理人によって発見された。
ロッジのリビングの中央には焦げた焼肉と燻ぶった練炭。全ての窓やドアが閉められ密室状態であった。
学生は全員一酸化炭素中毒で1人だけが助かった。その一人こそが海津隆夫だったのだろう。
警察は学生たちが虫の多い外ではなく室内で焼肉をしての事故という判断を下した。
しかし、その場に駆け付けた探偵チューバ―・小和泉治夫が『これは事故ではなく事件だ』と言い、床に転がっていた5つの川の潜水用超小型ボンベを見て、海津隆夫は計算してそれを使い生き残った。
仲間内で諍いがあって殺したんだと事件宣言をしたのである。
ニュースでもその小和泉治夫の見解を説明していた。
探偵チューバ―は2年前から多く現れ特にインプレッション稼ぎをするために事件現場に乗り込んで大した推理力もないのに騒いで時に犯人にされた無実の人が自殺をすることも起きて社会問題にもなり始めていた。
この事件に関して警察は転がっていた道具の位置などから意識を失う寸前に手が届いたのではないかと告げたがその位置取りも犯人の計算だったと小和泉治夫は断じた。
結局、彼はSNSで解説し世論は大きく傾いた。
「それで確かこの事件で犯人だって言われた人は意識を取り戻したもののショックで退院できない状態だったな」
天加はそう心で呟きチラリと中津川和夫を見た。
中津川和夫は息を吐き出し手の色が変わるほど両手を強く組み合わせたまま
「海津は意識を取り戻したけど、テレビでそれを知ってショックで立ち上がることすらできない状態になってる」
絶対に海津はやってない、と涙を滲ませた。
天加は彼を見つめ
「はっきり言っておくけど、必ずしも貴方が望む答えが出るとは限らない。だけど、真実を明らかにしようと思う」
と告げた。
隠蔽。不正。冤罪。それらのことで苦しむ人を見ると胸が軋んだ。両親と兄の事を思い出すからだ。
自分は当時12歳で子供だったから意味が分からず今の両親の下で生活を送っていただけだったが、兄は当時17歳で3年かけて警察が隠蔽した両親の死の真実を明らかにした。
どれほどの悔しさを胸に苦難を乗り越えたか。
それを考えると探偵じゃないんだけどなぁと思いながらも見捨てることが出来なかった。
天加は中津川和夫を見ると
「じゃあ、また花畑に結果を報告するので待っていてください」
と告げた。
そして、携帯を手にすると電話を入れた。
「世名さん、手を貸してもらいたいんだけど」
兄の天埜翔の知人で警察庁の警察官である桐谷世名に連絡を入れた。
現在、兄の天埜翔は警察庁をバックに大掛かりなプロジェクトを企画している。それが何かはわかってない。
兄に時折会うが、その時は何時も『大学はどうだ?』『お前はお前の好きな道を行け』とだけ言ってくれる唯の兄バカで何をしているかは言ってくれないのだ。




