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捜査立会人 ~オブザーバー~  作者: 如月いさみ
捜査立会人 ~オブザーバー~

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捜査立会人への誘い プロローグ 1

 足音で浮上した意識が再び遠のく。


 辛うじて伸ばした手に触れた川遊び用に用意していた小型酸素ボンベを握りしめた。


 倒れ落ちているだろう他の友人たちの分も力の入らない手で転がした。


 届け。

 届け。

「届いて……くれ」


 海津隆夫はそう小さく呟くとそのまま意識を手放した。


 電灯で明るい室内とは反対に外は既に日が暮れている。

 風はなく深々と降る夜の闇が木々の姿を怪しげな闇の生き物のように見せていた。


 数時間後。

 怪しく闇に佇んでいた木々は赤く照らすパトライトによって更に不気味さを醸し出していた。


 海津隆夫がいたコテージの周辺には規制線が張られ、山間だというのに酷く賑やかであった。


 室内には4人の男女の遺体が冷たく床に伏して品川西警察署刑事課の坂本蒼矢が軽く舌打ちしながら

「……助かったのは一人だけだったのか?」

 と呟いた。

 

 彼の部下である西浦一馬は半分呆れたように

「ええ。しかし、いくら虫が多いと言っても窓を閉め切って練炭でバーベキューなんて……窓を開けないといけないくらい分からなかったんでしょうかね」

 とぼやいた。

「典型的な練炭事故……ですね」


 それに連絡を入れた管理人も俯いて為す術がないように立っていた。


 窓も扉も閉められ、バーベキューコンロの上には焦げた焼肉や野菜が既に冷たくなって放置されていた。


 坂本蒼矢は周囲を見回し

「鍵は奥のダイニングテーブルの上で肉の皿と焼こうともっていた肉と野菜だけ、か」

 と呟いた。


 他には何もなかった。

「完全な密室だな」


 坂本蒼矢がそう結論付けた時……外から警備についていた交番員の声が響いた。


「ここからは立ち入り禁止だ! 待て!」


 声と同時に携帯を手にした若い青年が姿を見せた。

「フフフ、探偵チューバ―の小和泉治夫がこの事件を解き明かしましょう! 事件ですよ! 事件!」


 坂本蒼矢は眉間に指を当てて顔を顰めた。

「……探偵チューバ―か」


 西浦一馬もまた

「迷惑探偵……」

 とぼやいて足を踏み出した。

「ここは一般人が入って良い状態じゃない」


 それに小泉治夫はグルリと回りを映し小型ボンベを目に

「確か、一人だけ救急車に運ばれて助かったとか」

 と言い

「なるほど、これは小型ボンベを利用した殺人事件の可能性がありますね」

 と告げた。


 この瞬間にSNSを通じて山荘ロッジで起きた事件が一瞬で世界中に知れ渡り、同時に意識不明で重体の海津隆夫が犯人だと広まったのである。


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