捜査立会人 15
天加はテーブルに置かれた湯気の向こうを意味なくぼんやりと見つめ
「捜査立会人は探偵チューバ―も警察も同じ第三の目で見なければならないか」
と呟き
「探偵チューバ―が正しい時も警察が正しい時も、どちらもが間違っている場合もある。今回みたいに二つが結びついて忖度や隠蔽をする時もある」
唯一つ
「捜査立会人は絶対に間違えちゃダメな仕事だってことだよな」
とぼやいた。
外では風がそよそよと流れ人々はその地下で何が起きているかを知らないまま明るい活気の中で談笑を広げていた。
桐谷世名は天加と別れたあと検察庁の一角にある検事執務室に姿を見せていた。
息を吐き出しながらソファに座り
「これまでは悠さんに食い止めてもらうばかりだったが……天加君がもう一つの防波堤になってくれそうだ」
と告げた。
能力はある、と断言した。
それに自身の席に座りながら検察庁で日々案件を処理している検事の遠島悠は笑みを浮かべると
「翔君が進めていたプロジェクトが動き出したのか。この女性についてはSNSで軽い気持ちだったみたいだがプライバシー侵害と名誉棄損でも……それなりに重い罪になるな。それが殺人と殺人未遂に繋がっているからな。本件の方の二人は実刑確定だな」
と告げた。
「ただ、この土地を手に入れようとした理由が気になるね。ただの土地ころがしと言う感じではないからね。そう言う地価の高い土地でもない。背後に大きな何かあるように見える」
世名はフゥと息を吐き出して
「さすが、遠島検事だ」
と呟き
「相羽検事長も遠島検事を検事置きするのに悩んでるんじゃねぇの? 級がテンパってる気がするけど」
と肩を竦めた。
遠島悠はふっと笑うと
「あの人は現場には私のような人間がいた方が良いって言ってるけどね」
と軽く答え、黙々と報告書を作っている検察事務官を一瞥して直ぐに戸口へ向かう世名に視線を戻した。
そして。
「ああ、元弁護士の検事として助言を一つ……弁護士は被疑者の背後から現われる」
そう付け加えた。
世名は戸口の前に立ち肩越しに彼を見て
「なるほど、悠さんのご忠告ありがたく賜っておく」
と答えると
「そう言えば、川原凛也くんのおねーさんに聞いたけど悠さんも能力爆発する時驚くことがあるとか」
天加君も突然能力が急上昇することがあるんだけどねぇ、と検察事務官をスッと一瞥した。
突然、強烈な推理をかまして何もかもを見抜いたような状態になることがある。その時は氷のように零下の空気を漂わせた『探偵の中の探偵』の姿になるのだ。
遠島悠は笑むと
「まあ、何か頭の中のパズルが全て急に揃って嵌る感じの時はあるね。でも別にそう言う感覚は誰にでもあると思うよ」
とさっぱりと告げた。
世名はハハッと笑うと
「誰でもねぇ」
とボヤキ
「じゃ」
と戸を閉めて立ち去った。
天加の知らないところで大きな運命の渦がゆっくりと動いていたのである。




