探偵塾最初の事件 4
通常は部屋を選ぶことは出来ない。
フロント係の男性は頷き
「はい、ただお客様は静かな部屋が良いと仰ったので一応こちらの端の部屋ということでご案内はさせていただきました。エレベーター前の騒がしい部屋を好まれないお客様もおられますので」
と答えた。
フロント係の男性が言った通りに部屋は一番奥にありその奥に非常階段があった。
現在、全てを川原涼也が動画を取って流している。
翔はそれを見ながら
「なるほど」
と小さく呟いた。
部屋の中は極普通のホテルの部屋で遺体は直ぐのところで仰向けに倒れていたということで戸を開けて刺されたということは分かった。
財前理人は中に入り待機していた新宿中央警察署刑事課強行犯係長の難波達夫に一礼した。
難波達夫は止々呂美修也から指示を受けており
「お待ちしておりました。遺体は現在検死を受けており写真でしか遺体の状況はお見せできませんが他の部分に関しては鑑識が遺留品や指紋、ゲソ痕などを行っただけでその他は弄っておりません」
と告げ、調書を手渡した。
待ち構えていたということだろう。
探偵の探りが入っても疚しいところはない、不正などしていないという気合も難波達夫からは感じられた。
財前理人は冷静に受け取り調書を見た。
死因は胸を刺されたことによる出血死。凶器はそのまま残っており大間正明の時計は午後10時10分を指していた。
死亡推定時刻はこの時計の時間だと判断したということだ。
調書には事情聴取をしたアル・カヤと岩尾としおのアリバイ内容も書いていた。
アル・カヤは午後9時半に池袋レストランで知人と会食をしており11時までトイレの5分ほど以外はずっと居たということはレストラン従業員も証言をしていた。
岩尾としおに関しても警察庁長官の執務室で朝から業務を行っており夜の11時まで建物から出ていないことは監視されて反対に証明されていた。
それ以上に午後10時前後に20階にエレベーターでの人の出入りはなかったのだ。
財前理人は息を吐き出し
「時間を利用したトリックも考えられるが」
と呟いて調書を見つめた。
「だが大間自身が9時に会社から社員に電話を入れているから例え犯人が時計の針を細工したとしても二人ともに完璧なアリバイがある」
つまり午後9時までは会社にいてその後新宿へと移動したということになる。そう考えると直ぐに移動したとしても到着は午後9時半以降になる。
犯人が時計を弄って誤魔化したとしても9時半以降の時間ということだ。
アル・カヤも岩尾としおもその時間以降のアリバイは完璧なのだ。
となると二人の息のかかったザイ・カヤやモーリス・チェンのような実行犯がいる可能性があるが、これまでの例を見てもこの二人が主体で他の人間が動いているとは考えにくい部分がある。
だが二人は今拘置所の中で動けない状態だ。
難波達夫は息を吐き出し
「我々も今第三の人物を想定して動いている」
と告げた。




