探偵塾最初の事件 3
財前理人と川原涼也はビルの下で待っていたタクシーに乗ると現場の東都新宿駅前グランドホテルへと向かった。そこには止々呂美修也から指示を受けた所轄の刑事が待っており二人が到着して規制線を抜けようとした彼らを止めかけた交番員を制止した。
「構わない」
それに駅前交番に勤務し駆け付けていた若い交番員は敬礼をすると二人を見送った。
川原涼也は携帯を構えながら本番として実況中継も入れた。年齢は22歳。本来の仕事はフリーライターであった。つまり先日襲われた山形優一と同じ職業ということだ。
反対に財前理人は17歳。高校生で以前に彼の住んでいた地域では高校生探偵として有名であった。
ただ、と翔は大きく映っている画面を見ながら
「財前は俺と同じだ」
と心で呟いた。
彼の父親は地元で活躍する代議士であったが1年前に自殺を計り死亡。その後、汚職に手を出していたと噂が流れ残された彼と母親はその土地を離れて母親の実家へと身を寄せているということであった。
しかし、その噂は直ぐに立ち消えて実際にはどうだったかは分からない状態であった。しかも、その自殺も……翔が調書を見た限り自殺ではなく他殺だと判断できるものであった。
「彼の父親は今回のカヤ土建から派遣された不法滞在者を大量に受け入れている企業を犯罪に協力している企業で法的に取り締まる条例を提出していた。つまり、俺の父のようにカヤ土建に纏わる不正を明らかにしようとして消された可能性が高い」
……その企業の顧問弁護士をしていたのが大間だ……
「私怨を挟んで真実が見えなくなるか。それともそれを乗り越えて真実を見極めることが出来るのか」
それが大きな分かれ目だ、と翔は画面を見ながら心で呟いた。
財前理人はホテルの中に入ると豪華なエントランスを見回しながら最初にフロントへと向かった。
「すみませんがこのエントランスの防犯カメラと部屋のある階のカメラの映像を見せていただけますか?」
そう告げた。
フロント係の男性は慌てて
「は、はい」
と答え
「防犯関係は裏手の警備員室で仕切っているので」
とカウンターから出て歩き出した。
防犯カメラの映像を見ると死亡推定時刻の午後9時から12時の間にエントランスの映像の中には大間正明の姿はなかった。
財前理人は目を細めた。
そして、一緒に来ていたフロント係の男性に
「2003号室のチェックインは?」
と聞いた。
それに男性は
「それが山口太郎様と言う方で大間正明さまではありませんでした。チェックインは午後9時で帽子やサングラスで顔までは」
と答えた。
財前理人は頷くともう一度9時少し前のエントランスの防犯カメラを見て
「この人物が?」
と聞いた。
それにフロント係の男性は頷いた。
背丈は似ているが確かに帽子やサングラスで容貌が分からない。
「大間かどうかだな」
財前理人は更に20階の同時刻の防犯カメラの映像を見て
「エレベーターを降りているとこは映っているが部屋に入るまでは映っていないって事か」
とぼやき
「これらの映像を頂きます」
とデータを貰ってエレベーターに向かうと20階へと上がりかけて見送ろうとしていたフロント係の男性に
「もう一つ」
と言うと
「この部屋はホテル側で選択を?」
と聞いた。
それには動画を撮っている川原涼也も首を傾げ他の面々も目を見開いた。
翔は口元にだけ笑みを浮かべて事の成り行きを見つめた。




