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武士は覚悟がキマってる

「しかし日の本に戦がないのはすばらしいこと。そんな世の中を見たかった。生まれたかった」池


「これから一緒に見ましょうぞ、親父殿。筑前殿のもと日の本を統一して」


「さてそのときそれがしは生きておるかな?」


 その場の全員の視線がこっちに向いた。反応に困った。


「そうでござるか。それがしは平和になった日の本を見れないのでござるな」


「え、お前の夢では親父殿死んでた?」


 私はうなずいた。


「っていうか400年後は全員死んでるだろうけどそういう意味じゃなく?」


 私は視線を下に下げる。どうやって伝えようか。


「つまり明日死ぬのでござるな?」


「え、なにそういう話?」


 うなずいた。


「え、じゃあもしかして俺もか」


 うなずいた。この人たち察しがいい。


「マジか。誰に討ち取られるの、俺?」


 気になるポイントそこなんだ?


「誰かはわかりませんが鉄砲の玉が当たって」


「それはマジで当たったときにはもう手遅れだな」


「孫七郎殿は?」


「孫七郎は命からがら逃げ延びました」


「それは良かった」


「最初に部隊壊滅するのにな」


「あの、私の夢やっぱり信じられませんか?」


「信じるとも信じないとも言えんな、まだ」


「では私の息子たちは無事でしたか?」


「ちょっと待ってください。どうだったけな?」


「ここにおる次男坊照政と、それと長男元助にはお会いになりましたな」


 お忘れの方もいらっしゃるだろうけどこの部屋で話し合ってるのは3人だけじゃない。小姓を除いて4人。池田さんと鬼武蔵さんと私とあともうひとり。次男坊殿。この方、この部屋に来てから一言も発していないのね。もはや目の前のいても存在を忘れかけるほど無口なの。ただ父親が死ぬかもしれないと聞いて険しい表情はしている。


 そういえば池田輝政ってどっかで聞いたことある気がする。なんか関が原で東軍にいなかった? なんJ談義で出てきたような。姫路城と関係あったような。じゃあ池田家を継いだのこの人? 元助さんは?


 あれ? 明日死ぬんじゃね?


「次男さんは生き残られます。長男さんは確信が持てません」


「なんだよ、はっきりしてくれや」


「ひとりでも生き残れたら池田家は続きまする。それを聞けて安堵しましたぞ」


「あの、もっと驚いたり、取り乱したり、悲しんだりはしないのですか?」

 

 信じ切っているわけでもないだろうけど真剣にとらえていないというわけでもなさそう。なのにやたら落ち着いているんだよね。


「戦場においては常に今日が命日と思って生きておりまする。明日の敗北を聞いて死ぬこともありえると思っておりました」


「死ぬ覚悟なく戦場には立てんよ」


 これが武士の死生観か。覚悟キマってる。


「わたくしは覚悟できておりませぬ!」


 輝政さんが突然大きな声を上げたので驚いた。そんな声してたのね。


「父上と兄上を失う覚悟はできておりませぬ。そしてわたくしだけ生き恥を晒して生き残るなど」


「父と兄を失った時は生き残れ。それがお前の役割だ」


「息子よ、間違っても連れ立って死のうなどと思わないで欲しい。生き残ることは生き恥ではない。家を絶やすことが死に恥なのだ。父と兄の名誉を思うなら生き残れ」


 輝政さんは悲しそうな瞳をして黙ってしまった。


 もう完全に信じられちゃってるけど、重ね重ね言いますけど、明日ほんとに起こるのかあたしも自信がないんすよ。ちょっと改変されてるし。それに


「あの…、今生の別れみたいになってるとこ申し訳ありませんが、そうならないようにここでご相談しているのですが…」


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