予知夢
「なんですと!? そんなことが!?」
「いやまだ何も話してません」
「ああ、そうでござるなお話くだされ」
池田おじさんはけっこうファンキー。親戚のおじさんのようなノリでボケをかましてきた。実際親戚なんだけど。
「驚かないで聞いてください。敵方はもう我々の動向に気づいています」
「やはりそうでござるか」
「まあそろそろだよな」
まったく驚かれなかった。
「あれ、そんなもんですか?」
「まあ城も落としてしまったしな。いつ知られてもおかしくない」
「城主、村瀬作左衛門いわくこの大留城から離れたところに見張り小屋があるそうな。確認させたところそこの番兵がいなくなっておりました。あっという間に城が囲まれたので援軍を求めて小牧山城に伝えにいった可能性があります」
「ああ、じゃあ想定内ということですか」
「望ましいわけではござらんが」
「いづれは気づかれるしな」
「では明日の早朝に奇襲されるというのは?」
「え?」
「どういうことだ、それは?」
「岩崎城までの途中に林がありますね?」
「白山林ですな」
「明日早朝その林で敵方に追いつかれ奇襲されます」
「追いつかれるということは小牧山城の兵にござるか?」
「はい。今夜、小牧山城の兵がこちらの追跡を始めます」
「なんでそんなこと知ってんだよ? 内通者でもいるのか?」
「い、いえ、内通者はいません」
「しかも正確に追いつく位置まで知ってるのはどういうことだよ? おおよその時間も。そんなのやってみねえとわかんねえだろ。両軍が示し合わせて待ち合わせしないと無理だ」
ですよね。手紙を交換して待ち合わせしないと無理ですよね。
「ええっとそれはですね…」
「なんかお前あやしいよな、記憶がなくなってからというもの」
「いやけしてやましいことはしていません」
「なんか可愛くなってるしさあ」
「え?」
「ちょっと今ここで愛し合うのはやめてくだされ。この大事な話が終わってから存分になされ」
「いや愛し合いませんって」
「それは別にいい。でもなんで知ってるんだ、明日の奇襲こと」
「夢です」
「は?」
「記憶と引き換えに私は予知夢を見るようになりました」
「何いってんだ、おまえ?」
「たしかに夢は未来を占うもの。明日奇襲される夢を見たのでござるか?」
「はい。ボロ負けします」
「縁起わりい夢見てんじゃねえよ」
「白山林にいたのは誰の部隊にござるか? 全軍にござるか?」
「いえ、私の率いる9000です」
「ん、じゃあ親父殿の部隊はどこだったんだ? 行動を一緒にしてるだろう?」
「ちょっとややこしいんですが私の見た夢では私が別働隊の大将をしていました。お父上が第1隊、鬼武蔵さんが第2隊、堀さんが第3隊で、私が最後尾です」
「お前の願望が生み出した夢じゃないんか? 大将降ろされてよほど悔しかったんか?」
「もし願望なら私の部隊が奇襲を受けてまっさきに壊滅するのおかしいじゃないですか」
「壊滅すんのか、お前の部隊?」
「はい」
「ちょっとは粘れよ」
「若輩者ですので」
「記憶もないしな。よく大将やれたもんだ」
「いえ、さらにややこしいんですが夢の中でボロ負けしたのは記憶のある孫七郎です」
「え、なに、お前、夢の中で記憶取り戻してんの? 今はどうしたんだよ? 夢から覚めて記憶も夢に置いてきたんか?」
「非常にわかりづらいのですが、夢の中で私はさらに先の未来にいます。そこからこの戦いの記録を見ています」
「なんだか新しい宗教が始まりそうだぞ」
「この戦いが終わったあとの孫七郎殿がこの戦いを振り返っているということにござるか?」
「振り返るというのが適切かわかりません。なんせ私はその戦いの記憶もありませんので。あくまで残った記録を参照してるだけです」
「ちなみにどれほど先の未来なのでござるか?」
「めちゃくちゃ先です」
「それがしは生きておりましたか?」
「いやみんな死んでるような未来です」
「え、なに、お前も死んでるの?」
「はい。孫七郎も死んでます。数百年も先の未来に飛んだんです、夢で」
「ほう、数百年も先とな。おもしろい」
「数百年後のことはどれくらいわかるのでござるか?」
「めちゃくちゃわかります」
今の時代よりも。
「そのころは日の本では誰が天下を取ってるんだ?」
「誰と言われましても…」
「ではその未来では今の世のように国同士が入り乱れて争っているのか?」
「いえ、日の本は統一されてます」
「「おおおお!」」
2人は歓声をあげた。武将的にはテンションアゲアゲポイントらしい。
「統一できたのですな」
「で、誰なんだ、そこで政をつかさどっているのは?」
「んっと、いろんな人ですね」
「そりゃそうだろうがそいつらの一番えらいやつの名前だよ」
「えっと、岸田さん?」
「岸田? どこの武将であろうか」
「あ、武将ではないです」
「武将ではないのか、公家なのか?」
「公家でもないと思います」
「公家でも武家でもないものが日の本を統べているのか?」
「もしかしたら先祖をたどれば公家だったり武家だったりするかもしれませんし、農民だったりもするかもしれません」
「なんだ、出自のわからんやつが一番上に立っているのか? 数百年後も下剋上の世の中なのか?」
「今ほどではないです…」
「その方は羽柴家の子孫にござるか? つまり孫七郎殿の子孫?」
「いや違うんですねえ。確かに羽柴家も出自がわからんものですけど」
「岸田殿はどうやって天下を取ったのだ?」
「えっと……選挙?」
「何だそれ?」




