出陣
楽田城まで2時間弱でも気分としてはあっという間だった。馬に乗るというのが新鮮で、周りの景色も新鮮で、田んぼだ、荒れ地だ、草っぱらだ、森だ、川だ、民家だ、城だ、砦だ、ノンケだ、ホモだと考えている間に着いた。まだ乗ってたいくらいだった。時刻は夕方6時頃だろう。小牧山はすぐそこに見えていた。
そういや鬼武蔵さんにかわいいとか言われたけど。どうなったんたっけ? 弟分としてお前たちはかわいいぞとか言ってたな。なんだ、弟分としてか。この人最初会ったその時はホモかと思ったけど実はノンケだったのかもしれない。残念。
でもノンケだったからといって相手への興味を失ったり、態度がつれなくなったりするような無粋な女ではない、私は。
ノンケにだって需要はある。ノンケはホモの始まり。ノンケスタートでホモになってくれればいいのだ。今は助さんと武蔵さんがカップリングしないかなと考えている。
城についたら池田さんが迎えてくれた。
「孫七郎殿。よくぞ。ご無事で」
「いや危険な要素一切なかったです」
秀吉おじさんもこちらに移動してきてたみたいで迎えてくれた。
「疲れた? お茶飲む?」
「馬に乗ってるだけなんで全然疲れてません。大丈夫です」
「お茶は飲まない?」
「飲みたいです」
絶対飲んでほしいんだなと思った。私も実際飲んでみたかった。
部屋に案内されて出てきたのは、急須に緑茶とかじゃなくて茶道の抹茶だった。戦場まで茶器持ってきとるんかい。
飲む作法などは助さんに助けてもらった。
ガブガブ飲む感じじゃなくて量は少なかった。
「けっこうなお点前で」
「あとは茶器を褒めるのです」
「金ピカで高そう。かっこいい」
「もうちょっと上手く褒めていただかねば…」
「おお、お前はこのありがたみがわかるか。金ピカの茶碗は趣味が悪いというものもおってな」秀吉さん
「芸術的な茶器を出されても私にはわかりませんが、金ピカなのは私でも高いとわかります」
「そうよのう。わかりやすくていいよのう」
「俺もそういうわかりやすいやつが好きです」鬼武蔵さん
茶を飲んでいる間に日は落ちる。あたりは暗い。
とうとうきた。出陣の時間だ。
ここからは兵も将も鎧を着た。
鎧は肩にずしりときた。兜と合わせて10キロは超える。
馬に乗るのがさらに大変だった。
鬼武蔵さんにまたお尻を押してもらった。
「よし、いざ出陣!」
これを池田さんが発言してから私たちが城から出るまで1時間以上かかった。とにかく順番待ちが長いのなんの。いったん馬から降りておにぎりを頬張った。
今度は炊きたてほっかほかだった。
「夜は米炊くんだね」
「ええ、今日は行軍しますので」小姓さん
「普段は炊かないの?」
「普段は朝のみで、それを昼にも食べて、夜食はありませぬ。今日はそれではお腹が減ってしまいますので三食目を食べます。さすがに朝炊いた米を夜まで残すのは傷みますので炊きなおします」
「へー」
「ただし今日の場合は炊きたてを食べられるのはあとから城を出ていく我々だけです」
「なんで?」
「夕方、日が落ちぬうちに米を炊いたら煙が敵に見えてしまいます。すると今日行動を起こすことを敵に悟られてしまうのです」
「ほー、かしこい」
「なので先に出ていった兵は朝炊いた米の握り飯を夕方になんとか食べるか、乾燥させた米を水で戻して食べました。朝に炊く米も普段より多いと煙の量でバレますので、普段から多めに炊くのです。余った分は乾燥させて携行保存食にしていきます」
「よくできてますなあ。あとなんか自分だけ炊きたて食べて申し訳ない気分」
「孫七郎様は将であらせられるので気にせずとも良いのです。わたくしなどは小姓の身分でありながら炊きたてを食べて心苦しくはあります」
「だよね、なんか気が引けるよね」
「ではわたくしと一緒に朝炊かれた臭い飯に挑戦しますか?」
「いやせっかくの炊きたておにぎりを堪能しよう」




