天守閣
トイレから帰ってきてから何やら互いに気まずい空気だった。そんな空気を変えようとしたのか鬼武蔵さんは地図を出してきて現状を説明してくれた。
犬山城
小牧山城
「敵方が籠もるのが小牧山城。今我々がいる犬山城から南南西に歩いて一刻半」
1刻が2時間だった気がするから歩いて3時間。12キロくらいの距離だろう。
「もうここから見える」
「え、ほんとですか。見たい見たい」
「では天守に登ろう」
犬山城の天守閣は20メートルから30メートル位の高さだった。
「うっわ、いい景色」
「ああ、いい景色だな」
小山の上に立つこの城の真横には川が流れていて、川面からの天守の高さは100メートルはありそう。城から川はもはや崖のような角度だった。
「この川なんて言うんですか?」
「木曽川だ」
「あー、聞いたことある~」
「なかったらやべえんだけどな。地元だし」
「田んぼ田んぼ~」
「そうだな。田んぼだな」
「素敵素敵~」
「だな。見せて良かったわ」
なにこれ~、デートなん? 鬼武蔵さん優しいんですけど~。
さっきまでの気まずい空気どこ行ったの~?
「いや景色を見せに来たわけじゃないんだが」
「あ、そうだ。城、城。あ! あそこ城ありません? あれが小牧山城?」
眺めの左端の方、遠くの山の上にちょこんと城が乗っかってる気がした。
「いやこっち北側だから。小牧山城はねえよ」
「え、じゃああれは単なるそこらへんの山? 城が乗ってるように見えるのは気のせい?」
「岐阜城だ」
「おおおおおおお」
「そこは覚えてんだな」
「あれが岐阜城!? しゅげえええ。行きたーい!」
「戦が終わったらな。終わって生き残ってたら一緒に行こうぜ」
「ちょやめてくださいよ」
「え、なに、俺と行くのやなの? ちょっと傷つくんだけど。親友なのに……」
「いやそうじゃなくて。この戦が終わったらうんたらかんたらとか言った人で生き残った人知らないです」
「いやいっぱいいると思うよ?」
「戦が終わったあとのことを話すのは縁起が悪いんです」
「じゃあ前もって恩賞の話できないじゃん。池田の親父殿はこの戦で勝ったら尾張の国をもらう話になってんだぞ」
「あーそれは、終わりをもらうみたいで縁起悪いですね」
源頼朝関連でそんな話を聞いたことがある。
「恩賞の話もってきたの、お前だぞ」
「あら。それはいかんですね。なかったことにしましょう」
「親父殿、敵方に寝返ってしまうわ」
「じゃあもういっそ別働隊やめません?」
「やめられっかよ。なあ。若いお前は戦の前でとにかく不安かもしれんが、親父殿もお前も死なせはせんから」
「頼もしい」
「じゃあ勝利したあかつきには親父殿も連れて岐阜城行こうぜ」
「ゲン担ぎってことですか? 私たちの義父だから」
「ん、あ? うん? ああ、そういう……。義父と岐阜ね。うまいな」
「あ、なんかわたし滑ったみたいになってる!」




