お昼ごはん
3人でお昼ごはん食べようということになった。
今度のおかずは納豆だった。
「あ、これ納豆!」
戦国時代の人も食べてたんだ。
小姓さん
「はい。お好きでしょうか?」
「うん、好きだよ。これ藁に入ってたの?」
「もちろんそうでございますが、藁以外に入ってる納豆をご存知なのですか?」
そらパックに入ったのとか。
「いや知らない。でも藁に入ってるのも生で見た記憶がない」
森「忘れすぎだろ」
私「す、すんません」
ああ、つまりもとの孫七郎なら見てて当たり前のものなんだよね。
「藁に入ったものをお持ちしましょうか?」
「え、ほんとに。見たい見たい! 取り出すとこも見たい。そんでまた一緒に食べよ。ほらそこの子たちも一緒に食べよ」
お義父さんや森さんの小姓さんたちにも一緒にお昼ごはんしようと誘う。
池「よし。その方らも自身の膳を持ってくるが良い。納豆は藁に入ったままでな。1人2本持ってくるように」
「「「はっ」」」
小姓の子たちが出ていった。
森「まさか納豆でそれだけはしゃげるとは」
私「いいじゃないですか、別に」
森「ああ、忘れてたらなんでも新鮮に映るからな。前向きにそうやって新しいことで日々を彩っていこうぜ。一緒に」
え、なんかエモいこと言ってない、この人? しかも一緒にって言った?
池「あれ、やはりお二人はそういう……」
2人のことほんのちょっとだけでいいから聞かせてもらえるかな。10時間くらい。
小姓「お待たせいたしました」
早いよ。30秒も待ってないよ。
森さんが2人の関係性を匂わせてたら、匂わせる食べ物がやってきた。
小姓「これが藁入り納豆にございます」
実物を1つ手渡してくれた。
はーん。腐った私には納豆がお似合いってことかい。
納豆は発酵、私は腐敗。納豆に失礼だぜ?
「これどうやって取り出すの? 取り出しづらくない?」
パックに入った納豆だってあの透明のフィルムシートに何粒かくっつくと戦いが始まるのに。時々めっちゃ乾燥した粒があって噛むとやたら固い。
たぶんフィルムがなかったら全部あんな感じに乾燥しちゃうんだろうね。きれいにフィルムが取れた時の気持ち良さよ。
「端の糸を切って縦にして落としたり、もしくは横に折るように開いて取り出します」
「粒がいっぱい残らない?」
「上手に取らないと残りますね。やってみますか?」
「やりたい。やりたい」
森「楽しそうだな」
私「なんでもないようなことが幸せなんですよ」
「ぱんぱかぱーん!」
突然お義父さんが場違いな擬音を放った。この部屋の他の5人がみなそちらを向く。
どこで知ったの?その擬音。
池「ただいまより第1回納豆取り出し大会を開催いたす!」
森「お、親父殿。納豆取り出し大会とは?」
池「納豆を取り出す大会だ!」
森「でしょうな」
池「もっともきれいに納豆を取り出せた者には褒美を取らす。粒に触ることなく残さぬように取り出すのだ」
森「なるほど。3人の小姓のうち誰がうまく取り出せるのか争わせるのですな。これは主である我らも見応えがありますな。おい、負けるなよ。主の威信がかかっていると思え」
森さんは自分の小姓にハッパをかける。
私「はい、やります。やります。私もやります」
手を上げてアピールした。
森「まあ、お前はやるだろうな」
池「大会の出場者は6人!」
森「え?」
池「さあ、それぞれ1人1本ずつ得物を手にせよ」
池田お義父さんはすでに手に納豆をスタンバイさせている。
池「おや? 武蔵守殿? いかがなさった? 狐につままれたような顔をして。早く得物を握られよ」
森「あ、はい」
私「前向きに新しいことで日々を彩っていきましょう」
森「あ、うん」
池「残った粒の数が同じ場合は早く取り出したものを上位といたす」
森「あ、わかった。これがやりたいから納豆6本持ってこさせたんだ」
池「各自、はじめ!」
優勝者 織田家重臣 池田紀伊守勝三郎恒興




