第2話 ラクラミキオアラと『世界一クラブ』
イワセザールの説明を聴いたツルモは、目を輝かせた。
「なんか、ちょっと小悪魔っぽい感じの子だな!俺、そういう子好きなんだよなぁ〜!」
「え、ほんと!?それなら、ちょうど良かった!」
イワセザールは、とても嬉しそうな顔をした。
「えっ?ちょうど良かったって、どういうこと?」
「まずラクラミキオアラは俺に、『それでイワセザール君。君に質問があるんだけど』と言ったんだ」
「おおっ。どんな質問をされたんだ!?」
「『君、本を読んだり絵を描いたりするのは好き?』って訊かれた。俺は正直に、『本は学校で読まされたもの以外は読んだことが無いし、絵も学校で描かされたもの以外は描いたことが無い』って言ったんだ。あと、『ノートの隅に落書きを描いたことならあるよ』って。」
「うんうん。そしたら?」
「『ふ〜ん⋯ノートの隅に落書きをするっていうのは、意外と大事なのよ。シャガールだって描いていたんだからね。あ、そうだ!』って言って、可愛いバッグからスケッチブックと色鉛筆を取り出したんだ」
「え?妖精なのにバッグを持ってるの!?」
「俺も同じこと思って、それ訊いたんだよ。そしたら『妖精だってバッグくらい持つわよ。じゃないと荷物を持って出かけるとき、困るじゃない』って言われた」
「アハハハハ!それは、ごもっともだな!」
「うん。で、『このスケッチブックに、ちょっと描いてみて。落書きを。この色鉛筆、使っていいから』って言われたんだ。だから仕方なく言われた通り、描いたんだよ」
「何を描いたの?」
「猫だよ。俺は学校の授業中、先生の説明が理解出来なくて頭がこんがらがったときには、ノートに数え切れないほどの猫を描いてストレス発散するんだ」
「⋯どういうストレス発散法だよ⋯。まあいいや、それで、描いて見せたわけだな?」
「うん」
「どういう反応⋯というか、評価だった?」
「『とっても上手な犬の絵だね!』って褒められた」
「⋯褒めてないだろ、それ。猫を描いたんだからさ」
「そうなのか?そのあと、俺は『もっと大きな動物も描けるよ』と言って、馬の絵も描いたんだ」
「今度は馬か⋯で、彼女はそれを見て、なんて言った?」
「『可愛いキリンだね』って」
「⋯首を長く、し過ぎたんだな⋯」
「そのあともいくつか絵を描いたけど、彼女はあまり楽しそうには見えなかったんだ、俺と話しているとき。多分、ラクラミキオアラが求めているのは俺みたいなタイプじゃなくて、君のような人なんじゃないかな」
「え?どういうこと?」
「彼女は大空なつきという日本の作家が描いた『世界一クラブ』という物語が大好きで、集めているんだ。それを読んだり、その物語に出てくるキャラクターのイラストを描いたりして一人の時間を過ごしているんだけど、『世界一クラブ』にでてくる男の子や女の子は、みんなそれぞれ、特技があるんだよ。とても個性的なんだ」
「⋯それで、なんで君よりも俺の方がいいと思うの?」
「君は俺より個性的だし、読書が趣味だろ?ラクラミキオアラは、『本を読んだり絵を描いたりするのが好きなお友達、いないかな?』って俺に訊いてきたんだよ。そのとき既に俺の頭の中には、君の顔が浮かんでいたんだ」
「なるほど…」
ツルモはイワセザールの話を聴いている最中から、既にラクラミキオアラに対して強く惹かれ始めていた。だから迷うことなく、こう言った。
「イワセザール、今度そのお爺さんが夢の中や心の中に出てきたら、その杖を友達、つまり俺に貸してもいいか、訊いておいてくれ。勝手に使うのは良くないからな。許可が出たら、俺は杖を持ってラクラミキオアラのところに向かう」




