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占いの館で彼女を奪われ、異世界で王族の婚約者にされたので、僕は必ず取り戻す  作者: 播磨 颯太


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12.明かされる事実

アデン国 ジロームの部屋の前


冷たい石造りの廊下に、ゆうは立ち尽くしていた。


「……そんな……」


マムが語った衝撃の事実が、頭の中でぐるぐると渦を巻いている。


のぞみさんがアデン国の王族の血を継ぐために、未来から連れてこられた……?


そんな運命、受け入れられるはずがない。


のぞみは、未来の世界では何のしがらみもない、ただの大学生だった。自分と同じ時間を生きて、笑って、普通の恋をして——。


その彼女が、未来の王家存続のために、ここへ連れてこられた?


そんな理不尽、許せるわけがない。


ゆうは拳を強く握りしめる。指先が白くなるほどに力を込めても、胸のざわつきは収まらなかった。


「……っ!」


ゆうは重たい気持ちを抱えながら、従者・カオリの言葉を思い出していた。


——「婚約をしてから婚姻までに、交わりを持つことは、法により禁じられています。」


カオリは、静かにそう言った。


——「しかし、法が守られなければ、そんなことは関係ありません。」


不穏な言葉だった。


——「のぞみ様の婚約者、ニヒル様は王位継承権を持ち、権力もございます。法の解釈を変えてまで、のぞみ様に迫る可能性も、ゼロではないのです。」


あのときのカオリの表情が脳裏に蘇る。


冷静で、まるでこの国の現実を知り尽くしたような、諦めにも似た目。


「……そんなこと、させるわけない……!」


ゆうの心臓が早鐘のように打ち始める。


今、のぞみはどうしている?

本当にニヒルが——


「マム!のぞみさんは今、どうなってる!?」


無意識にそう問いかけていた。


——分かるわけがない。


マムが透視でもできるというのか?いや、そんな都合のいいこと……。


しかし、マムはしばらく何かを考えるように沈黙した後、ゆうをまっすぐ見つめた。


「……こちらを向いてください。」


「え?」


「じっとしていてください。少し……特殊な方法ですが。」


マムは静かに歩み寄ると、両手でゆうの頭を包み込んだ。


「……!」


顔が近い。


ほんのり甘い香水の匂いが、強く漂ってくる。


ゆうは、思わず喉を鳴らした。


(え、ちょっと待って……まさか……)


ドキドキと、心臓が早くなる。


(マム……キスするつもり!?)


顔がさらに近づく。


しかし——


「目を閉じてください。」


マムはそう言うと、そっと自分の額を、ゆうの額に当てた。


「……っ!」


その瞬間、ゆうの視界が暗転する。


——いや、違う。


景色が変わった。


目の前に広がったのは、見知らぬ部屋だった。



のぞみのいる部屋


広々とした空間に、豪奢な調度品。

重厚な扉と、壁には金の装飾。

そして——


天蓋のあるベッド。


そこに、のぞみが横たわっていた。


「のぞみさん……!」


まるで本当にそこにいるかのように、ゆうはのぞみの姿をはっきりと捉えた。


「……すごい……」


マムの能力に、ゆうは驚愕する。


ふわりが言っていた。「マムには強力な能力がある」と——。


これが、その力?


いや、これがすべてではない。


これはまだ、ほんの一部なのかもしれない——。


ゆうは、のぞみの寝顔を見つめながら、拳を握った。


のぞみは、シルクのパジャマを纏い、ベッドの上に横たえられている。

まるで囚われの姫のように、力なく。


そして、その傍ら——


ニヒルが腰掛け、邪悪な笑みを浮かべていた。


「……っ!」


ゆうの全身の毛が逆立つ。


のぞみは、静かに涙を流していた。

細い肩が震えているのが分かる。


まさか……!


もうニヒルがのぞみさんに手を出したのか!?


怒りと恐怖が、同時に胸を締めつける。


そんな中、マムを通じて、二人の会話がはっきりと聞こえてきた——。


「……ゆう君のもとに帰して……」


か細い声だった。


しかし、その言葉には、はっきりとした意思が込められていた。


のぞみは、涙を拭おうともせず、ただニヒルを真っ直ぐに見据えていた。


だが、ニヒルはニヤついたまま、何も答えない。


「……占いの館では、私とゆう君に良い変化が起こるって言ったはず……!」


のぞみの声には、怒りが滲んでいる。


しかし、ニヒルは肩をすくめ、嘲笑うように言った。


「……あったではないか。」


「……あったって? これの何が良い変化なの……!?」


のぞみの瞳が揺れる。


ニヒルはゆっくりと立ち上がり、のぞみの顎を指で持ち上げた。


「お前は王族へ嫁ぐことができるのだ。ゆうは貴族になることができた。これよりも良いことなどない。」


勝手な押し付け……!


のぞみの体が小さく震える。


「そんなの……あなたの勝手な理屈よ! 今すぐに、ゆう君のもとに帰して!」


「私はあなたと婚姻なんて決してしない!」


叫んだ。


しかし、ニヒルの笑みは崩れない。


むしろ、深くなった。


「……そんなことを言って良いのか?」


のぞみの背筋に、悪寒が走る。


「……?」


「それでも、お前は私の言うことを聞くことになるのだ。必ず、な。」


「……どういうこと?」


ニヒルは愉しげに目を細めた。


「今日の裁判で見ただろう。」


——裁判……?


のぞみは、昼間の光景を思い出した。


石造りの裁判所、冷たい空気、震えるクリスとヒーダ——。


「……姉弟の禁断の恋は重罪になると。」


「!!」


のぞみの目が大きく見開かれる。


「お前が……弟であるゆうと恋仲にあることが知れれば——」


「……っ!」


「ゆうは、奴隷として生涯を終える。」


「……っ!!」


「お前は——あのおぞましいガイメンに、徹底的に辱めを受けることになるのだ。」


のぞみの脳裏に浮かぶ光景


泣き叫ぶクリスとヒーダ——。


奴隷を宣告されたクリスの、絶望の表情。


引き裂かれ、愛を奪われ、罪人として刻まれた姉弟。


あのとき、彼らは何度も叫んでいた。


「愛しているだけなのに!」


「罪なんかじゃない!」


「お願い、助けて!」


しかし、裁判官は冷酷に言い放った。


「姉弟の交わりは、死刑に値する。」



「……っ!!」


そうだった……!


占いの館——ふわりとマムに行ったとき、ニヒルは私とゆう君が恋人同士だと知っていた!


それで、最初から弱みを握っていたんだ……!!


なんて卑劣なの……!


私はまだしも……ゆう君をそんな目に遭わせるなんて、絶対にできない。


そして……


裁判では、姉弟の交わりは処刑と言われていた。


私とゆう君のスノボ旅行の、あの甘い夜のこと——


まさか、ニヒルはそこまで知ってるの?


「……!」


違う、そんなはずはない。


何でも分かるとか言ってたけど、あんなのはハッタリだ——。


そう信じたい。


でも……



ジロームの部屋の前


「……っ!!!」


ゆうは、拳を握りしめていた。


歯を食いしばり、体が震えるほどの怒りが込み上げてくる。


ニヒル——!!!


目の前で繰り広げられるやりとりに、息を呑みながらも、ゆうの心はひとつの決意で満ちていた。


——絶対に、のぞみさんを助ける。


何があっても。


のぞみの心は、恐怖と混乱で張り裂けそうだった。


——ニヒルは、私が言うことを聞かなかったらどうなるか分からせるために、わざとクリスとヒーダが裁かれる場に私を呼び寄せたんだ……!


なんて卑劣なの……!


クリスとヒーダの涙、叫び、絶望の顔が脳裏に焼き付いて離れない。


彼らの運命を、自分とゆう君に重ねないようにするには……。


考えれば考えるほど、息が詰まりそうだった。


だが、そもそも——


なぜ、私とゆう君が、アデン国に連れて来られなければならなかったの?


理由が分からない……!


のぞみは唇を噛み、恐怖を押し殺しながら問いかけた。


「……なんで、私たちをアデン国に呼び寄せたの?」


ニヒルは、にやりと笑う。


「……良い質問だ。」


のぞみの背筋に、嫌な予感が走る。


「教えてやろう。」


ニヒルはゆっくりと立ち上がり、部屋をゆったりと歩きながら語り始めた。


「私はな——」


「子孫を残すために正室を持ち、数十の側室を持った。」


「そして、日夜——欲望の限りを尽くしたのだ。」


——っ!!


ニヒルの唇が不気味に歪む。


その瞬間、のぞみの肌に鳥肌が立った。


「……!!」


息を呑む。


この男は、何を言い出すつもりなのか。


「だが——」


ニヒルの声が急に低くなる。


「なぜか、全く懐妊の兆しがない。」


のぞみは思わず息を止めた。


「毎日、一人も欠かすことがなかったのにだ。」


ぞくり、と背中に冷たい汗が流れた。


ニヒルはニヤついたまま、のぞみの顔を覗き込んでくる。


「私は、ふわりを呼び、占わせた。」


「そして——分かったのだ。」


のぞみの喉が、こくりと鳴った。


「正室も、側室も、どの女も——我が王室の血を引く子孫を宿せない。」


「なぜなら、私の血が特殊なのだ。」


のぞみの指先が震える。


嫌な予感が、胸を締めつける。


「ふわりの占いによると——」


「この時代にはいなかったそうだ。」


「私の子孫を宿せる者はな。」


のぞみの心臓が跳ねる。


いや——違う。


そんなはずはない。


そんなこと、あってたまるものか……!


ニヒルの声が、ゆっくりと響く。


「……ふわりは占い、探し続けた。」


「そして——たった一人いたのだ。」


「私の子を宿せる者が。」


——やめて。


それ以上、言わないで……!


だが、ニヒルの口は、決定的な言葉を紡いだ。


「それが——のぞみ。お前なんだよ。」


——!!


視界が揺らいだ。


血の気が引く。


「……っ!」


その場に立っているのもやっとだった。


理解したくない。


受け入れたくない。


頭が真っ白になる。


次の瞬間——


のぞみの体がふらりと傾ぎ——


そのまま、天蓋付きのベッドへと倒れ込んだ。



ジロームの部屋前


「のぞみさん!!」


透視の光景が、ゆうの目の前で揺らぐ。


のぞみが、崩れ落ちた。


「のぞみさん!!」


思わず、叫んだ。


マムが目を見開き、素早くゆうの口を手で塞ぐ。


「……っ!」


「ゆう様、声を抑えて下さい。見張りが来ます……」


ゆうの心臓は、狂ったように鳴っていた。


ニヒル……


貴様、だけは絶対に許さない。


握りしめた拳が、震えていた。

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