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〜異世界言語〜

 目を覚ました瞬間、周りは見慣れない景色だった。

 やたらと広い草原に、見たこともない動物たちが走り回ってる。

 

 「あれ…?これ、異世界か?俺、転生したのか?」


 頭を整理しようとした矢先、俺の前に現れたのは…


「おお、じぶん、やっと起きたんか?いつまで寝とんねん」


 話しかけてくれたのは、どう見ても、異世界っぽい服装をしている男である。


「え、あ、はい。俺、もしかして転生したんですか?」


 と俺は戸惑いながら答える。


 その男、何を思ったのかいきなりニッコリと笑って俺に話し掛けた。


「そやで!異世界人よ!よう来たな、この世界へ!」


「え、でも、なんで関西弁なんですか?!」


 と、思わずツッコんでしまった。


 その男は、不思議そうな顔をして言った。


「関西弁ってなんや?何言うてん?異世界ではみーんな、これが普通じゃ。」


「は…?」


 頭が完全に混乱した。


 その後、町に案内される途中、出会った全員が関西弁。道を歩いてる商人、空を飛んでる魔法使い、そして宿屋の主人までもが全員、完璧な関西弁で話してくる。


「お兄さん、何しに来たんや?」


 と、町の門番に問いかけられた。門番の態度も、普通に「おおきに」や「なんでやねん」と言う感じで、全然異世界感がない。


 この町のエルフやドワーフも、みんな関西弁を使う。


 もちろん、多少ニュアンスの違いはあるが、それは大阪か京都か兵庫かといった関西圏の違いにしか感じられない。


 俺は困惑しながらも、心の中で異世界言語って、こういうものだったのかと思い始めていた。


 そして、しばらく歩いていると、街の中心で出会ったのは、いかにも勇者って感じの若者。


「うわ、やっと会えたか!君も転生してきた新入りなんか?」


 勇者にノリノリで声をかけられた。


「え?君もって、あなたも異世界人なんですか?こっちって、みんな関西弁なんですか?」


 俺は聞いた。


「そやで!この世界の言語はみんな関西弁や。魔法使いも戦士も、全部関西弁やからな。もし、お前が標準語を使おうもんなら、すぐに『なんやそれ』って言われるで!俺大阪から転生して来たから、めっちゃありがたかったわー」


 大阪の勇者に笑いながら答えられた。


「……えぇ……俺も使うの……」



 最初は驚いたが、だんだんとこれが普通なんだと感じるようになってきた。

 特に、冒険者パーティーの「さっさと魔法かけんかい!ええかげんにせぇ」とか、「もうちょっと、はよ回復してや!死にかけたやないか」という突っ込みの速さは、なんか心地よくなってきた。


 ある日、町の広場で大きなイベントが行われることになり、俺もついにそのイベントに参加することになった。


「お前、参加するつもりなんか?」


 頼りない俺に言ったのは、兵庫から転生してきた魔法使いの先輩。


「しっかり関西弁で会話するんやで。」


「でも、俺、東京出身で関西弁あんまり得意じゃ…」


 と、弱気な俺。


「そんなん、なんとかなるやろ!がんばれ!」


 と、兵庫の先輩が励ます。


 その後、異世界の大事なイベントである儀式に参加することになり、俺も関西弁で一生懸命会話することになった。


 いつしか、俺の関西弁も流暢になり、どんどん異世界の関西のノリに染まっていった。










 ……あと、魔王もまさか関西弁とは思わなかった。



 ――完

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