〜マジカル・サンシャイン〜
目が覚めたら、真っ暗だった。
「おかしいな、車に轢かれて死んだはずだけど、これ、棺桶の中か?」
そう思っていたら――
「よかった、目が覚めたんですね!」
謎の美少女(声だけ)に助けられた。……が、やっぱり暗い。顔が見えん。
「すみません、ランタンが切れてて……これどうぞ」
そう言って渡されたのは、光る石。いや、ほんのり光るだけ。懐中電灯の豆電球モードくらい。
「これで最大光量です」
「暗いな……今何時?」
「今13時の昼ですけど……」
「……え!?」
俺は絶望した……
どうやら、この世界には“太陽”が存在しない。よくある異世界転生で「剣と魔法!ハーレム!冒険!」を想像していた俺には、想定外のシナリオだった。
とにかく、住民たちは暗闇に適応しすぎていた。
――例えば:
・学校は「光感知力」を競う授業ばかり。
・味覚も暗い中で鍛えられたせいで、全員やたら塩っぱい物が好き。
・みんな、性格が陰気。
・恋愛は基本、声と手触りで判断。顔は関係ないらしい。合コンで「肌触りタイプっすね」って言われた。なにそれ怖い。
・そもそも明かりが好きじゃないっぽい。
「俺たちの世界にはな、太陽ってやつがあってな、あったかくて明るくて…こう、ビタミンDが作れるんだよ」
「びた…?えっ、太陽って飲み物なんですか?」
全く、会話が成立しねぇ。
そんなある日、俺はひらめいた。
「この世界に“太陽”がないなら、作ればいいじゃないか!」
そう言って、太陽の代わりになる超巨大な懐中電灯を作ることにした。電池はどうするかって?魔力で動くに決まってるだろ。ここは何でも有りの異世界だぜ。
俺は完成した超巨大な懐中電灯を“マジカル・サンシャイン”と名付けた。そして、"マジカル・サンシャイン"を空に掲げて叫んだ。
「これが俺の太陽だああああ!!」
――数秒後。
「ぎゃあぁぁぁああ!」
「目が!目がぁあああ!!」
「眩しいぃぃぃ!!」
「やめて!文明が崩壊するううう!!!」
住民全員が暗闇適応者だったことを忘れていた。
その後、俺は“まぶしすぎて危険な男”として地下に軟禁された。
最早、俺の気分は完全にモグラだ。
いつかこの世界にも、俺の"マジカル・サンシャイン"によって、目を細めるような「朝」が来ると信じてる。
……いや、サングラスからかな。
――完




