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GOD HAND  作者: ホムポム
第6章  弔いへの復讐者達
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第88話 侵犯領域


「フンフンフ〜〜ン!フフン!!さんはい!」

くすんだ金髪の少女が平原をゆっくりと歩いていた。

見渡す限り草原。視野は良好。空は雲ひとつない快晴。


少女は即興の鼻歌を口ずさみ友にそれを

「…………。」「…………。」

無視するかのように歩く物と

無視しながら少女の肩に巻く物。


「サーベラス違うよ?フフン!じゃなくてフフン!!あとみんな声は揃えようね。」

微妙な違いを三首の番犬に伝える少女。


「…………。」

深淵の番犬にはその微妙な違いが理解出来ない。

ようやく理解したとしても……。


「あれ?フフン!だっけ?フフフ〜ンのほうが良い気がしてきた。ミズガルズはどう思う?」

少女は首元に寄り添う体長10cmの小さな蛇に自身の歌の感想を問う。


蛇は舌をチロチロと這わせる。

「ん〜?まっいっか!じゃあ一回通しでやってみようね!」


少女はご機嫌だった。また新しい友達ができた。

本人は悪魔だと言っていたが、少女には悪魔という種族の意味がわからない。

そして隣にいる三首の魔狼。

首元に寄り添う大いなる小さな蛇。

全て一緒だ。少女に違いなど理解出来ない。


だからこそ少女の事は誰も理解しきれない。



…………


……………………。



「失礼ですが……アナタ……アン.ドーソンですよね?

我輩の声が聴こえますか?」


遠く遠くの平原の先。薄っすらと人影が見えたと思うと頭の中に声が響いてくる。


「そうだよ!って、あれ??何処だろ?……キャッ!」

少女が元気よく返事をしながら

声の主を探そうと平原を見渡していると

魔狼が少女の襟を咥え背中に乗せた。


遥か前方を威嚇しながら。



「……このような少女?アナタですか?我輩の村を壊滅させたのは?エンハンス様の為の村を……。」


人影が僅かに近づき、アンは遠くの人物が喋っていると気付く。魔狼は唸り声を。蛇は首元から降りる。


「…………!?ダメ!それ以上アンに近づかないで!」

アンは異常を察して両手を突き出しその人影を制する。

まだ忠告だ。


「我輩が誰だかわかるのですか?ならばアナタでは決まりです!一応。念の為。保険として。」

人影は男だった。男は本を開き。何かを呟く。


「ダメッたら!!アンの言う事聞いて……ね?」

少女は必死に制止を促す。

聞く理由はあっても聞くはずがない。


男はニヤけづらでアンに近付く。距離は300メートル。

領域に入る。


「我輩はミッシング.パース!さぁ焦がれなさい。

我輩と友に共有しましょう!アナタが死んでもエンハンス様が忘れても……我輩はアナタを覚えましょう!

魔罰を受けた罪人として!」


ミッシングは両腕を広げ空を仰ぐ。

降り注ぐ太陽の輝き。まるでミッシングを祝うように


その空がヒビ割れ闇が落ちる。


「は?」

ミッシングのマヌケな声は掻き消される。


「ヨルムンガンド!!ダメー!!」

アンは大声で割れた空から出現した大蛇を制止しようと努める。

見渡す限りの平原は暗黒に包まれた。

男は溺れている。再現なき漆黒に。重力が逆転し空へと向かい男は上空へ上がりながらも落ちていく。


藻掻きながら何が起こっているか理解出来ていない。

自分が丸呑みにされた事。

何に食われたのかを。

そしてその先にある自身の…………。



…………

……………………。


「ぐ…………うぅ。」


「あ!?起きた!大丈夫だった?」

ミッシングが起き上がると割れた空など存在していなかった。ミッシングを丸呑みにした物も。

溢れんばかりの漆黒もそこには存在していない。


あるのは三首の魔狼と雄々しき小さな蛇。

そしてくすんだ金髪の少女。


「……魔物?……我輩は魔物に…………。」


「ごめんなさい。ホラッ!サーベラスもミズガルズもこの人に謝ろ?アンも一緒だから。」


少女は魔狼と魔蛇を優しく撫で謝罪を促すが

2つの生き物は知らんぷりを決め込んでいた。



「……魔物を使役?……素晴らしい力ですね!

魔物とは、ここまでの力をつけられるものなのですか?そうですか!そうですか!そのようですか!」


ミッシングは一人納得したように頷き。


「ね!おじさんほーりゅーでんってこっちで合ってる?」


アンは警戒心の感じさせない笑顔で目的地を聞くと、

「奉龍殿……でしょうかね?よろしいよろしい!

我輩が……案内して」


ミッシングが歪な笑みを浮かべながら少女の手を握ろうとした瞬間。


その手を三首の狼がペロリと舐めた。

「…………?……っッヅ!?」

「コラーー!なんてことするの!?」


アンは三首の魔獣を叱りつける。

それもその筈。舐められた手は腐敗し更に侵食し肘まで延び、更に更にミッシングを腐らせようと魔液を延ばす。


「…………グッ!!アァ!」

咄嗟に肩を握り潰し腐敗した腕を投げ捨てる。

数秒もしないうちに肉が溶け骨が剥き出しになった

元片腕。その光景にミッシングは戦慄を憶える。


「……ハァ……ハァ……。保険がいくつか効きましたね。

貴女には関わり合いにならぬのが吉。

二度と会いませんのでどうかこの場は見逃してくれませんか?」


腰をおろし三首の魔獣と白蛇に願いを告げる。

魔獣はヨダレを滴らせ。蛇はチロチロと舌を這わせ。


「あ……あの……おじさん。大丈夫?

本当にごめんなさい!どこかで手当……」


「…………不思議な娘ですね。貴女を守っていたんですね。正しい正しい正解だ!

心配には及びません。この程度。エンハンス様の力を借りれば…………」


男が本を指でなぞると文字が浮かび上がり

男には背丈に似つかわしくない腕が生え変わる。


「エンハンス様。貴方様のお力に感謝を。

そして貴方様のお力になれない我輩に罰を……。」


ミッシングは少女とは別方向へと歩き始めた。

振り返りはしない。もう警戒されている。

ツバをつけられている。

振り返ればきっと…………


「いくらなんでも無駄死にはゴメンですからね。

……にしても魔罰が発揮されませんでしたね?

あぁ……それもそうですね。我輩が愚かでした愚かでした

愚者でした。」



遠く離れ小粒になったミッシングに対し

「……大丈夫かな〜?

本人も言ってたから大丈夫だよね?

でもサーベラスはおやつ抜きだからね!」


ガックリとは項垂れる三首の魔獣。

「アンを守ってくれたんでしょ?

これからはアンと一緒に優しい方法を探そうね。」

優しく抱きしめ。魔獣は嬉しそうに頭を擦りつけミッシングを見送った。



ミッシングの言葉通り

ミッシングとアンは二度と会う事はなかった。


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