第183話 異常なる者
変わらないメンツで斡旋所を後にする。
マスターは来ずに魔狩人とシェリル。
エリーとリア。そしてニーチェ。
変わらない。違う点は1つ。
「もうちょっとペースをあげるッス
日が昇るまでに街に到着したいッス!」
馬車を借りた。
エリー達を斡旋所まで運んでくれた馬が2頭。
女性が多いとはいえ2頭引きならば5人も乗れない。
今乗っているのはエリーとリア、シェリルの3人。
変わりに
「ニーチェ何でそんなに急いでるの?
魔狩人もだけど……キツくないの?」
「あっしは妹王女様と一刻も早く
再開させたいという思いで胸が張り裂けそうなんス!
心配するなら場所変われッスよ!
馬術にも秀でるあっしが御者を務めるッス!」
魔狩人とニーチェは
馬車の移動に合わせて走っている。
「……ニーチェ。気持ちは嬉しいんですけど
そんなに苦しいなら歩きましょう。
わたくしも早く会いたいですけど無理させては……」
エリーは荷台に揺られながらニーチェに語りかける。
魔狩人は平然と走っているが
ニーチェはどう見ても、いっぱいいっぱい。
今にも止まりそうな勢いだ。
「お……王女様も心配するなら……
話しかけないで…………くださいさい!
息が…………乱れる…………ッス……ハァハァ。」
しかし止まらない。足を止めずに走る。
「ニーチェさん。このペースなら
俺余裕あるからおぶろうか?多分いけるよ。」
ニーチェの崩壊顔に見かねた魔狩人が
隣を並走する。ニーチェはコクンと頷き。
「よっと……」
ニーチェを背負い速度を落とさず馬車とともに走る。
「ひゅーーう!魔狩人号発進!
あっしと魔狩人君が揃えば1+1が100!
10倍ッスよ!10倍!」
「…………ニーチェ。」
チラチラと後ろを気にしつつ
納得いかない顔のシェリルを無視する。
「あ……魔狩人君あんまり揺らしちゃダメッスよ。
あっしのような華奢な女の子は優しく扱うッス。」
「ハハ、了解ニーチェさん。」
………………
………………………………
「……で?昼時に到着したけど?
ここで何をするの?ニーチェ。」
「シェリルは何怒ってるッスか?
街に着いたら1泊する以外ないッス。
あっしは宿屋をとってくるから自由行動ッスね。
ニーチェ.ランカスター名義で
予約しとくッスからから。…………解散!
羽目を外しすぎず、宿屋に着くまでが遠足ッスよ!」
「それなら急ぐ理由ないじゃない。
魔狩人に引っ付きたかっただけよ。」
ブツブツと文句を言いながらニーチェに続く4人。
魔狩人とシェリルは護衛だ。
自由行動と言われてエリーから
目を離す理由にはいかない。
エリーも一日中馬車に揺られ疲れが溜まっている。
正直休める事は有り難かった。
………………
「あ〜1部屋でいいッス。…………そうそう。
4人だから代金は…………オマケしろッス!」
宿屋の主人と親しげに会話を挟みつつ
部屋の鍵を受け取りエリーに手渡した。
「結局、皆着いて来ちゃったッスか?
カルガモさんみたいッスね。
あっしはお酒でも飲みに行くからから、
やる事ないなら宿屋にいていいッスよ。
ご飯さんはもってこさせますんで。」
ニーチェは手を振りながら宿屋を足速に去って行く。
「…………。」
「魔狩人、やっぱりニーチェが気になるの?」
「あぁ。気になるな。」
「…………そう。」
……………………
大部屋の一室に腰をおろした4人。
ベッドは大きめのサイズが2つ。
「あ……わたくしはリアと寝ますので、
それでよろしいですの?」
エリーは特に疑問も持たずにベッドを確保する。
常日頃から見られる生活が板に付いてる
エリーには男と同室だろうか気にならない。
魔狩人とシェリルも仕事で
同じ部屋になる事は多かった。
だが…………同じ布団を共にする事はなかった。
「えぇ!それがいいわ!
私は魔狩人と……あとニーチェと一緒に。
詰めれば狭くないから」
「いや、俺とシェリルだけだ。」
「ま……魔狩人。そうよね!ニーチェは雑魚寝よね!」
扉をノックされ。魔狩人が警戒しながら扉をあけた。
外には男女一人ずつ。キョロキョロと見渡し
「え?あ……!間違えました!すいません!」
「本当にすいません!」
二人は深く謝りながら足速にその場を去る。
「 ? なんなんですの?」
「間違いじゃないかもです。
アイツ等は部屋の前でウロウロしていました。
誰かを探してたんだと思います。」
魔狩人は部屋に備え付けの水を飲む。
「…………大丈夫。飲める。」
「魔狩人……どうしたの?」
その形相にシェリルは不安な顔付きに変わった。
「この部屋は4人分の代金しか払われてない。
確認したけどニーチェさんの分が入ってないんだ。
それと……さっきの奴等……身体付きから言って
町人じゃない。冒険者だ。
……ここが宿屋だから普通にありえるけどさ。」
「ニーチェが何か企んでるって言うの?」
「企むとか言うなよ。
ニーチェさんは絶対に信用出来る。」
悪い言い方をしたシェリルを魔狩人が睨んだ。
スゴスゴとシェリルは頭を下げる。
何か異様な雰囲気が室内を占拠している。
………………
………………………………
宿屋に腰をおろして数時間。
魔狩人とシェリルは神に祈りを捧げ
疲れていたエリーとリアはベッドで眠りこけていた。
『怪物が来たぞー!蛮族も数人いる!
町人を全員中心部に集めろ!被害を出すな!
腕に覚えのある奴は南東に来てくれ!』
4人同時に目が覚める。
「ニーチェの意見を無視して歩いて来てたら
まだこの街には到着してなかったわよ。」
シェリルの機嫌は悪い。
自ら危険地帯に飛び込んだような物だ。
ニーチェがいなければ街を無視することも出来た。
当事者となった今は出来ない。
「俺は……ニーチェさんを信じるよ……。」
不信感が溜まりつつあった。




