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GOD HAND  作者: ホムポム
第9章  あなたとの約束
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第180話 不確定


慣れ親死んだ扉に手をかける。

「目標は……ヴィジャの声を聴くこと!」


扉を開き中の様子を探る。

あくまで堂々と。恐怖心は出さない。

アサミちゃんがやったように。


「誰だァ?」

「………………。」


何百回繰り返そうと変わらない。

ここまでは…………。


「悪魔さんがいるって聞いて、

弟を元に戻す方法を聞きに来たッス!

良かったら教えてほしいッス!」


「あの馬鹿の姉か。俺様の客だなァ……」


弟を出汁に使わせてもらう。

良心など痛まない。そんなものは今は必要ない。


「これから他の悪魔が集まるゥ。

外で3.4ヶ月待ってろォ!」



「あ……じゃ、じゃあここで待たせてもらっても

いいッスか?邪魔はしないんで

どうぞあっしにお構いなく。」


トルコマンが眉を潜めた。

やり過ぎたのか?違う。境界線がわからない以上は

引き続けるしかない。悪魔の琴線に触れるラインを。



「…………お前ェ。なんか企んでるなァ?」


心臓の鼓動を最小限に抑える。

冷や汗も表情も隠しただ貫く。

ニーチェ.ランカスターを


「そりゃあ、あっしは弟を元に戻してほしいって

企みがあるッスよ。むしろお願いッス!」


「俺様も嘘が好きだからわかるんだよォ。

お前ェ、楽に死ねると思うなよォ。」


抑えていた心臓が跳ね起きる。

脈拍が乱れに乱れ慟哭が鳴り止まない。


トルコマンは片手を突き出しニタリと嗤った。


「   魂包    」


「……………………………………」


………………

…………………………



此処は何処なのか。

廃墟だ。悪魔達の声が聴こえる。

アタシの身体が転がっている。

だったらアタシは何処にいるのだろう


身長が縮んだのか。

四つん這いになっている気がする。

背中が少し重い。誰かが背中に乗っている。




「…………貴様等。遊びが過ぎたナ」


聞き覚えがある声がした。

聞き取り辛い言語を喋っている。


背中が軽くなった。

アタシに乗っていた何かが降りたのだ。


ホコリが舞い上がる。

咳き込む必要もないほど

何処にもホコリは身体に入っていかない。

身体に付着しているのはわかった。



………………

………………………………


「ニーチェちゃん……動ける?」


………………ア…………



喋れた。

違う。声が出ない。何も出ていかない。

しかし声は聴こえる。考える事も出来る。


涙声の少女をよく知っている。

一生懸命酒場の仕事を頑張る優しい少女。

生まれてくる命を誰よりも待ち遠しく

思っていた少女が心配そうにアタシに語りかける。


「…………動けないよね…………

ニーチェちゃん。ゆっくりでいいから。

伝えて。どうしてほしい。」


どうしてほしい?決まっている。

こんな身体なのだ。早く早く早く。


………………コ…………ロ……シ……テ


「ニーチェちゃん。ごめんね。ごめんね。

アイツら殺したから。ごめんね。

悪魔共はこれから絶対に皆殺しにするから。

天国でお姉ちゃんと観てて。

守れなくて……ごめんね。」


涙がアタシの身体に染み込んでいく。


音を経ててバラバラにされていく。

散らばる木片(アタシ)。魂が終わりを迎えようとしている。

何故……アタシは椅子になっていたのだろう?




…………………………



「ヒイッ!……ヒッ……ヒック……」


また戻る。アサミちゃん達と別れ

懐中時計に喋りかけていた場所へと

何が起こったのか……

どうして……どうしてアタシは……


「……!?…………ある!手が……足も!」

そんな当たり前に喜んだ。涙が出てくる。

思い出したくもない程の恐怖が

未来にはあった。

殺されない。ただ椅子に魂を閉じ込められ

思考するだけの存在と化す。


アサミちゃんが来てくれなければ……アタシは……


「……もう……無理……あの場所は行けない。」


心が折れかける。廃墟に行かずとも手はある。

銃を最短で手に入れ

アサミちゃんをなんとか説得する。


アサミちゃんに襲われる状況を作らない。

だから……だから…………


それが可能ならば最初からしている。

自ら悪魔の廃墟など一人乗り込まない。

間に合わないのだ。……絶対に。


地面をダンダンと、殴りつけ

もう一度立ち上がる。立ち上がれない。


「……怖い…………怖い…………。」


アサミちゃんが来てくれなければ

アサミはあの絶望をもう一度味わう。


「何が怖いの?」


いつの間にか人がいた。

強引に涙を拭い、震える足に力を入れて

立ち上がる。


目線には誰もいない。違う。少し下。

そこには、くすんだ金髪の幼女と銀髪の少女。



「久しぶりだね!ニーチェ!」

幼女は元気よく挨拶をしてきた。


久しぶり。過去で会った事は一度もない。

未来で会う事は何度か会った。

そして……この幼女は…………


「あれ?あっしと会った事あったッスか?

ど忘れしちゃったッス。

こんな可愛い子達、覚えてると思うんスけどけど。」


「ん〜〜と。4日ぶり?違うよね

4日後、かな〜?でも随分久しぶりだよ。」


「 アン 何 言ってるの?」


……やっぱり。この金髪の幼女は覚えている。

絶対に記憶出来ない事象を。

そして隣の少女は普通だ。

過去数回会って全て覚えていなかった。


だからこそ。覚えている幼女が……危険。


また……また…………また逃げ出そう。

追っては来ない。

バレたらいけない。バレたら……バレたら……


何故この二人だけは決まった場所にいないのか。

この場所は誰も訪れない。

過去数百回誰も来なかった。


なのに……この二人は…………


「これあげるから元気出して!」


幼女が差し出した小さな小指程の金属。

歪な形。不気味な歪曲を描いている不出来な金属。


「これは……なん……スか?」


知っている。弾丸だ。

アサミちゃんが銃と共に探している金属。

リア会長のバッグの中に銃と

共に押し込まれているのを未来(過去)で見た。


しかしこれは…その弾丸と違い不出来。

綺麗な楕円ではない。歪曲した楕円。

これは……失敗作なのだろうか?


「おねぇちゃんとおにぃちゃんがくれたの!

握ると元気が湧いてくるよ!

アンも寂しくなったら握ってるから!」


きっとこの金属は大事なものなのだろう。


「いやいや!そんな大事そうな物いただけないッス!

ちっちゃい子から貰うのは

笑顔だけって決めてるッスよ!」


幼女は自らのスカートをたくし上げた。


「ほら!アンは平気だから!」


「……それじゃあ、お言葉に甘えて頂くッスけどけど…

女の子がはしたないマネしちゃダメッス。

かぼちゃパンツが丸見えですです。」


目の前にいる幼女のスカートを裾を下げる。

この場には女性しかいないが、

そんな問題ではない。

その行為が癖になる前に注意する必要がある。


「アン 今のは はしたない 」


「なんで?スカートを持ち上げただけだよ?

おねぇちゃんも風通しが良いからって

よくやってたし。」


「アンの お姉さんは そんな事 しない

きっと みんなが 憧れる 素敵な女性。」


「フフ、おねぇちゃん喜んでるよ。

バイバイニーチェ。また会えるといいね。」


幼女と少女は手を取りスタスタと歩き出した。

元気の良い声が次第に遠ざかっていく。


「早寝早起きを する人間は 素敵な人。」


「でも、おねぇちゃんはズボラな所もあるんだよ。

甘いお菓子しか食べないし」


「お菓子好きと ズボラは 関係ない。」


「そっか〜〜。」





幼女に貰った不出来な金属を握りしめる。



「も……もう一回……それでダメなら……

もう一回……またもう一回…………よし!」


全部………試してやる。

全力で試してやる!


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