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GOD HAND  作者: ホムポム
第7章  愛しの我が子へ
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第117話  魔眼


前門のジャム。後門の龍神。

どちらを籠絡させるかなど

ニーチェにはわかりきっている。

ニーチェは振り返り声には出さず

口の動きだけで伝える。

会得しているかもわからぬ読振術に期待して。


「ーーーー。」


「……………………。」

その場から動かず微動だにしない龍神。


「って!龍神様〜目閉じてるッス!何寝てんスか!?

今が起き時飲み時吐き時ッスよ!」


声に出そうにもこの酒の存在は

見過ごせる範疇を大きく超えている。

ニーチェは竜人にとっての誇りを汚す犯罪を

おかしている。逆の立場ならニーチェは絶対に

見逃さない。堅物の老兵ジャムなら尚更だ。



「そこの竜人ヨ。」


龍神の瞳は落ちたまま。

しかし突き刺す言葉は明らかにジャムを示している。


「貴様はいつからそこにいたのダ?」


「…………え?」


ジャムの身体が強張る。


「貴様は今しがたこの部屋に赴いタ。そうだナ?」


「………私は……先程からこの場に……………。」


ジャムは理解した。龍神は買収されてしまった。

この出来損ないの竜人ニーチェに。

元凶であるニーチェは事態をいち早く飲み込み

ニヤニヤと跪くジャムを見下している。


ジャムは深く息を吸い込み……


「失礼しました。私はつい先程参りました。

勿論私は何も聞いてはおりません!

龍神様と竜王様にお誓いして!」


「そうカ……ならばよイ。此処に来たついでダ。

吐瀉娘の休暇申請とやらをとって来イ。」


「……それは……私が判断出来る事では………

…わかりました。最善を尽くします。」


ジャムは深くお辞儀を済ませ。

部屋から退室していった。


龍神とニーチェ。二人きりとなった空間。

チラリと目線を龍神に配らせ。


「……あっし龍神様に休暇申請の事言いました?

ホロ酔い気分で言っちゃったッスかねかね?」


「貴様が口から吐いたのは汚物だけダ。」


「龍神様ぁ〜。それだどあっし。

口からウンウン出しちゃったみたいなんでなんで、

別の言い方……いや!キッパリ忘れましょうッス!」


龍神はおもむろに自らの右目を引きちぎり取り出す。

血も涙も出る事はない不気味な右目。


「本来ならばこのような玩具に頼る気はないガ、

半身の頼み故、三千年振りに今回は使っておル。」


ニーチェは右目を恐る恐る覗き込み。

「……悪魔の瞳ッスか?」


ニーチェの問に龍神は頷く

「心身を支配する魔眼。

我の眼球からヴィジャ.カオスが昇華させた物ダ。

我の用が済めば吐瀉娘……貴様にくれてやろウ。」


「カオス?ヴィジャ.カフスじゃねぇんスか?

第三悪魔とは別人ッスか?

……ってか、いらねッスよ!気持ち悪い!

女の子のお目々を移植するとかクレイジーですです!

勘弁ですです。」


「現代はそう呼ばれておるカ……。

後悔するぞ?この眼球をハメ込めば

軟弱な貴様には適合せず永遠に光を失くせたものヲ。」


「サラッと呪いの目ん玉を

押し付けようとしないでくださいさい!」


龍神は引きづり出した魔眼を自らの眼窩に押し込む。

瞬時に結合したかのようにハマり

上下左右に眼球を動かし感触を確認していた。


その光景に息を飲むニーチェ。


「…………あれッスね。

得体の知れない奴が同じ事をやってたら

恐ろしいッスけどけど。

年端も行かない少女がやると恐ろしい通り越して

頭おかしく見える不思議ッス!

……ジャム叔父がやってても『ついにボケちゃった?』で済むから驚かないんスけどね。」


奇譚のない意見を述べるニーチェ。

龍神は頬を緩め瞳を落とす。


ニーチェは唇を尖らせ、ふと思い立ったように


「……その魔眼って隠し事とかも読めちゃうんスか?」


「読んで欲しいのカ?」


ニーチェは表情を変えずに口元を上げる。


「読まねぇほうが見の為ッスよ〜。

完全にあっしの身の為ですけどけど。

こんなんでバレたらシャレにならんッスよ。」


「この魔眼は悪魔教徒を探す為だけの物。

貴様が何を考えていようと我の預かり知らぬ所。

存分に巧みに励メ」


龍神はベッドに正座し、

その状態から下腿のみを外側へずらしてハの字にし、

おしりをそのままベッドにぺったんとくっつけ……

いわゆるアヒル座りをしたあと、

添えた両手を顎を乗せ蹲まり。


スースーと可愛らしい寝息をたて始める



「龍神様……その格好……まさか寝る体勢ッスか?

龍神様のお身体の事はわかりませんが

リラックスからは程遠いッスよ?

身体バキバキになっちゃいません?」


「…………ゲロ娘……黙レ。」


龍神の重い一声に口を閉じるニーチェ。

自分のあだ名が更にランクダウンした事に

ツッコミたかったが、今はその時では無い。

今は龍神が少しでも心休まるようにする時。


ニーチェは音も無く龍神に近寄り、

「枕は……要らねッスよねよね。」


日の光が眠りの妨げにならないようにカーテンを閉じ。

外の兵士に龍神が眠った事を知らせ。

椅子に腰掛け龍神から片時も目を離さないように。



「……寝てると普通のちっちゃい女の子にしか

見えねッスね。体勢は……なんて言うか……

カエルさんみたいッスけどけど。」


ニーチェは龍神の目の前に椅子を運び


「ふふふ……ちっちゃい子は可愛いッスね。」

頭を優しくなで始めた。


ふと寝息をたてる少女の瞼から小さな涙が流れ落ちた。

「…………お姉……ちゃん………………。」


とても、か細い声。

気を張っているニーチェが聴き逃すことはなく


「…………。」撫でた手のひらを見つめ、


「………あっしも寝ちまいましょうかねかね。

ど〜せ誰も来ねぇッス!」



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