表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GOD HAND  作者: ホムポム
第6章  弔いへの復讐者達
102/184

第102話  その内にすくうもの


「遠出は疲れるよ。そろそろ帰ろうかね。」

軽く屈伸をしながら老婆がゆっくりと立ち上がり

他の者はそれを見つめていた。


ただ一人


「ん?エリーはシングルハートに聞きたい事なかったの?変わりに俺が答えるって事か?いいぜ!

俺の知識は枯れることの無い無限に湧き立つ泉の」

「リアを……この子を戻す方法は何か存じ上げませんか?」


「…………。さっきから皆して

食い気味に俺の言葉を潰さないでくれないかな?」


ダークが拗ながらテーブルに突っ伏す。


老婆はため息を付きながらリアに近寄り。

一瞥した後。

「ワタシゃ知恵袋じゃないんだよ…………

頭でも叩けば治るんじゃないかい?」

興味無さそうにリアから視線を切った。



「……ジェシカも『頭を叩くしかない!』って

言ってましたわね……。」


ジェシカだけなら戯言と受け取れるが

この老婆が口にすると真に迫る。

エリーがリアの頭を敲くことを思案していると、


老婆は驚きながら確認を取る。

「あの子が?……他にも何か考えてたかい?」


エリーは自分のバックから紙を2枚差し出す。

1枚はスラスラと書かれたエリーには読めない魔法文字。もう一枚は一生懸命書かれた普通の文字。それを老婆に恐る恐る渡す。


それらの紙を

ざっと目を通した老婆は僅かに目頭を押さえた。


「……ワタシはアサミを知らないからなんとも言えないね。見た事はあるけど。アンは……間接的に知ってるけど。どうだろうね?可能性がある程度。あとは神酒か……あれなら大抵なんとかなるね。」


老婆は紙を何度も見直していた。

その顔は何処か微笑ましい物を見るように。

暫くの時間の後。老婆は紙をエリーに返して


「どれ……見るだけ見ようか。」

リアと視線を合わせる。


深く深く。リアの瞳が落ちていく。

…………瞬間。見開かれる。敵意の瞳を老婆に向けて。

「ん?この亜人 体内に何か飼ってるね?

エンハンス!調べてやりな。」


「…………はい。」

エリーをずっと見つめていた生首のエンハンスが

瞳を開きリアを見据える。


「……魔物。侵食ではなく。再生。

反撃と迎撃。です。シングルハート様。」

エンハンスは瞳を閉じる。


「……。」

思い当たる節を考え込む老婆。

「無理矢理魔物を引っ剥がしてダークに殺させたら

その後、この娘の心を組み治してやってもいい。

見た所娘を治す為と護る為に誰ぞが付けたんだね。

過去に似たような奴がいたよ。」


「いや魔物は止めとこうぜ!色々深淵で世話になってるし……エリーが、命令するなら殺すけどさ。」


ダークは乗り気では無さそうに腰から大剣を引き抜く。


「……リアを守ってくれてるなら……引き続きお願いしたいですわ。魔物って悪い生き物かと思ってましたけど……。」


エリーはリアの見開かれた瞳に語りかける。トロンと瞼が落ち「あ う ああ あ。」

元の壊れたリアが顔を出す。



「神酒は降神祭の時で良かったらワタシの分をやろう。

アレが1番確実だ。まだ先だけどね。」


そう言って老婆はエリーに手を差し出す。

エリーは訳もわからず手を握ろうとしたが

「対価を寄越しな。」


「な……なにを差し出せば……。」


老婆は醜悪な笑みを見せる。


「その紙だ。どちらか1枚でいいよ。

同価値だからワタシからは選べない。」


少し呆気に取られたエリーは老婆の要求通りに

ジェシカ直筆の紙を二枚とも差し出し。


「……2つとも……いいのかい?これを交渉材料にすればにワタシからはなんでも引き出せるよ?まぁ、なにも持っちゃいないがね。」


「……わたくしが持ってるより占い師様が持ってるほうがジェシカもきっと喜ぶと思いますわ。」


二枚の紙を受け取った老婆は暫しその場に佇む。

ツヤのない髪を撫でながら


「ワタシは借りを作るのが大嫌いだ。

二枚は流石に天秤が釣り合わない。かといって返したくもない。」


「その紙はそんなに大層な物なんですの?」


老婆は二枚の紙を大事そうに懐にしまい

ポツリと呟いた。



「……あんたに価値が無くてもワタシにはある。

全ての生物に価値がある物なんて存在しない。

同様に全ての生物に無価値な物も存在しない。

そうやってこの世界は

下手糞ながら歪に回ってるのさ。」


自分の言葉のなにがおかしかったのか、廃墟を老婆の醜悪で憎悪滾る笑いが包む。


「…………。確かに歪だ!

次に会えるワタシはワタシかも知れない。ワタシじゃないかも知れない。でも間違いなくエリー.ヴァイスがワタシに会うんだ……。

だったら……ワタシに会ったらジェシカがワタシの事をなんと呼んでたか教えてやりな。

その時はあんたの力になれるよう協力してやるよ。それを対価とさせてもらう。

……最初は……いや、何処からこうなったんだろうね?」



老婆は扉を開け姿を消した。


気配が完全にきえた事を察したトルコマンが大きく息を吐き、同時にヴィジャもゆっくりと息を吐ききる。


「あ〜緊張したァ〜!」


「……何事もなくすんだな。」


ダークは近づいたリアの頭をワシワシと乱暴に捏ね繰り回しながら。


「シングルハートが協力するとか……

世界滅びるんじゃないの?シワシワ婆ちゃんなんだから大人しくしてりゃ良いのに……にしてもエリーはホント何者なんだよ?」


「……俺様達はちょっとここにいるけどよォ。

エビィ…………マスターはどうするゥ?」


トルコマンは目上が居なくなった事を良い事にテーブルに足を置き今後を聞いてきた。


「……ヴァイス王国……メアリーとお話しをして……

それからジェシカの妹を探そうかと思いますわ。」



「そおかァ。見送りは出来ないけどヤバく…………

エンハンスはマスターに何をつけたんだァ?」


「……常時は痛覚倍増。あとはエビィルが望めば増やすけど、持ちすぎるの良くないし。」


エリーは自分の身体を見渡す。

変わった所は見当たらず。異変もない。

少し頬をつねるが痛みはある。普通に痛い。


「痛覚倍増ってなんだか物騒な響きですわね。

どんな事が起こりますの?」


「何事も馴れさ。あれもこれも教えてもらってたら。

何もできなくなるぞ?

俺からも……んんっと……簡単なやつがいいかな〜?

これ!これを贈ろう!

エリーこのページ読んでみろよ。発音はな…………」


ダークは自身の魔導書を開きエリーに読み方と

発音を丁寧に教え



エリーは瞳を綴じ意識を集中させ

本の一文の読み上げる。


「こ……怖いですわね。


My lungs fill up with water」


魔導書から光が奔り。消えていく。


ダークはニヤリと笑い。

「今回は俺が補助したとはいえ……完璧だぜ。

もう少し補助が必要だがそのうちなれる。魔法使いエリー爆誕だ!

本来ならシングルハートに頼まれてた魔法だからな。

これからこの魔法はエリーだけの魔法だ!」



「わたくしが魔法……。ど…どんな効果ですの!?」

エリーは嬉しそうにダークを見つめ。


「かなり限定的だからな。使いどころが難しいぞ。」

ダークは指を立てエリーは生唾を飲む。



「ジョウロに水が貯まる。」

「……は?」


エリーは何を言われたのかわからずに

固まってしまっている。


「ん?もうちょい詳しく言うと、

空っぽのジョウロに水が貯まる。」


「…………ジョウロ??ジョウロ?ジョウロ……

お花に水をあげる為のジョウロ?」



「そう。そのジョウロ。」


明らかな落胆を周りに知らしめながら

エリーは扉を開けてリアの手を引き去って行った。


…………

……………………



「ダーク。何故嘘をつく理由がある?」

エリーが居なくなった一室でヴィジャの声が響く。


ダークは椅子から立ち上がり、

扉に手をかけ

「……限定的なのは本当さ。ジョウロに水が貯まるのも本当。無闇に使える代物でもないし俺は嘘はついてないよ?副産物がちょっと危険なだけだ。」


エンハンスをチラリと見

「エリーがあれを使ったら補助よろしく〜。ハンス君無しだとまだ無理だろうから〜。オレはハンス君の下僕半殺しに行くから……構わないだろ?」


エンハンスが頷く事を確認するとダークは扉から去って行った。



「……もう一個エビィルにつけてくる。

シングルハート様も暫く来ない。あと聞きたいんだけど……。」


「先に言っとくが知らねェ。」

「我もだ……マスターが奴だと気付かなかった。」


ヴイジャとトルコマンはエンハンスの質問がわかっている。だからわからない。


「なんでエビィルが生きてるの?

絶対に死んだ……寿命も全うした……。肉体も魂も安らかに天に還した。でも……それでも生きていてくれてたならーーー。」


生首のエンハンスが姿を消し。



残された三位と、四位。

「真面目なのは俺様達だけだなァ?」

「……そのようだ。」



……………………

…………




…………………………





扉をゆっくりと開け軋む音が部屋内に響く。

淀んだ空気に、太陽の光が差し込み悪魔達は顔をしかめた。



ギョロギョロと目玉だけを覗かせ一室を隅々まで見渡し

紅い髪の少女は燃え盛る感情を狂気の笑みに変えた。


「…………ここは悪魔のお家?」


「…………!?……ダハーカ?」


「?なんで人間が入って来るんだァ?今から他の悪魔が集まるゥ。死にたくなかったら消えろォ。」


ヴィジャは少女に驚きトルコマンは邪険に扱う。


「悪魔のお家で間違いないんだね。ニーチェちゃん。トルコ……なんだっけ?キリング?って人いる?」


少女の後ろからロングブーツとグローブから僅かに見える鱗を覗かせた女性がちらりと悪魔達を盗み見るように


「そりゃ俺様だよォ。力でも欲しいのかァ?クソガキィ。いいぜェ!外で3.4ヶ月待ってろォ!」


自ら名乗り出たトルコマン。紅い髪の少女は銀髪の男を射抜くように見つめ。


「あ……アイツッス!アイツが…………」


ニーチェと呼ばれた女性はトルコマンを必死の形相で呪い殺すが如く睨みつけ


少女が悪魔の問いに答え、ニーチェの想いに応える。


「……力は要らない…………だって…………。




       もってるから。   」



言い終えた瞬間。

トルコマンは無惨なほど八つ裂きにされた。






第6章 弔いへの復讐者達   完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ