第101話 第五の指輪
エリーは自分の左手を見つめていた。
4つの指輪。それら全ては
「……メ……メアリーがいなかったらわたくしは……」
老婆は興味無さそうに答える。
「さあ?今の妹よりも酷い事はないと言っておこうか。
でもアレは才能を亡くしたなりに良くやってるよ。
一般的に見たらただの無能だけどね。
でもあんたはもう見えないだろ?エリー。あんたの為にあの子は差し出した。躊躇いも後悔もなかった。今だってそうさ。あの子は姉を想い続けてる。」
「……マリー。」
呟いた言葉と共に涙が頬を伝う。
確かに……あの時から……。
自分が5年の月日をかけて自由の身となった時。
妹はオドオドしっぱなしで常に自分の後をついて回った。
それはエリーが成長して妹が成長しなかっただけだと思っていた。事実そうだったのだ。
妹の才能を姉が喰らい成長して
無能となった妹は成長することはなかった。
それを知らずにエリーは…………。
押し黙るエリーを一瞥して改めて
「さてエンハンスの処遇を決めようか?
ダークもいい加減殺したいだろ?」
「オレを快楽殺人者みたいに言わないでくれない?そんな雰囲気?空気?でもないしオレ結構空気読めるのよ。そもそも決めるのはエリーだろ?少なくともエリーの復讐心はエリーからの物だ……そのま……まri?の心じゃない。
エリーに委ねようぜ!」
エリーはここに来て心を揺さぶられている。
本当にダークの言う通りなのか。
それとも老婆が全て嘘をついているのか…。
「……エンハンス。
貴方は人間を殺さないと誓いなさい!
あとジェシカを殺した下僕!
ソイツだけは許せませんわ。」
エリーはいつの間にか生首に戻っているエンハンスに
視線を送る。送られたエンハンスは
「是は人は殺せない。」
「殺せない?沢山殺してたんでしょう!」
エリーの憤慨にトルコマンが割って入る。
「マスター。俺達は悪魔だぜェ?人間に危害は加えるけど基本人間の味方だァ。
無闇に人間を殺したりしないィ。間接的には殺すがなァ。人間の成長を促す……その1点に限って言えばエンハンスは種族として間違ってねぇよォ。」
絶句しかけるエリーにダークが付け足す程では足りない補足を口にする。
「知識が無いというのは辛いな。本当ならこんな当たり前の事も知らない奴は契約以前の問題だ。エリーに、限っては例外なんだろうが、悪魔が創った魔法がどれ程世界に浸透しているかわかるか?
悪魔がどれ程貢献してるか考えたことがあるか?
ヴィジャの心波……読心とも言った時代もあったな。
エンハンスの呪言。変換。強化。
他の奴等もだ。簡単な力なら下位種族に無償で与えている。
……となると俺だけが貢献してないのかな?俺の魔法は流行らないのはなんでなのかな?結構使い勝手良いと思うんだけど?」
静かに大男ヴィジャが口を開いた。
「貴様の魔法は使えても勝手が良いとは言えんな。」
ダークは頭を掻きながら分厚い魔導書を見直し
「やっぱ難しいのか〜?色々工夫してるんだけどな〜?トルコくん!ちょっと見せてやれよ!俺の魔法は簡単だってところをよ!このページ!このページ行こう!大丈夫!平気平気!」
ズイズイと魔導書を隣のトルコマンに押し付け
目を軽く通すが、
「……ダークの魔法は次元がおかしいだろうゥ。
俺様だって全快してねぇから使いたくねぇェ。
パスだなァ。」
「話しが進まないね…………。エリー.ヴァイス!
今決めな!ワタシはもうそろそろ帰るから。
せめて見届けてやるよ。
エンハンス.ペインの最後か最初を」
老婆は立ち上がりエンハンスとエリーを見下ろす。
テーブル伝いに老婆が外した指輪を滑らせ。
エリーの手元でピタリと止まる。
「……わたくしが……このエンハンスと契約したらどうなりますの?メ……メアリーに危害はありますの?」
指輪を手に取り見つめながら老婆に尋ねる。
「契約次第だ。エンハンスが決めていいよ。
言ってみな。」
老婆がエンハンスを見下ろす。
「シングルハート様……是は……是は……
愚者に……是を置き……頂点に…………。
是は汝を頂点とは認めない。頂点はシングルハート様!」
エンハンスの言葉の意味を。理解出来ない。
老婆は愉快そうに笑う
「結構譲歩したね?敬意を払う価値なんてないのにね。
エリー。エンハンスは力を与えるとよ。
条件はワタシ経由って事だ。どうしたい?
エリーにもメアリーにも危害は……殆どゼロだね。
力を使えば少し疲れる程度かね?……その辺はエンハンスなら上手く調整するだろうさ。
納得いけば指輪を好きな指に。」
エリーは頷き指輪をあたり前のように
左手の親指にはめ込み。
老婆は満足しながら天に向かい呟く。
「あんただけは観測てるんだろ?
また眠っちまう前にこの娘に名前をつけてやりな」
『……Ellie.Vice…………。
Evil……
彼女の魔名は……エヴィル.ヴァイス』




