第183話 外の朝
百八十六日目。
直人は目を覚ました。
見慣れない天井ではない。昨夜、自分で戻ってきた学校の部屋だ。
廊下から足音がする。水の入った容器が床を擦り、窓の外では朝日が校庭へ伸びていた。
洗面台へ行くと、高校生が歯を磨いている。
「おはようございます」
「おはよう」
「帰ってきたんですね」
「昨日言っただろ」
高校生は口をすすいだ。
「朝いると、なんか違うなって」
「何が」
「分かんないですけど」
校庭では見張りが交代し、端では洗濯物が揺れている。車の前で森田が箱を確かめていた。
「おう。積んであるぞ」
「あとで見る」
直人は門まで歩いた。
道路の端で空き缶が風に転がる。遠くには一体、歩く影があった。
距離を見て、門の内側へ戻る。
廊下の掲示板には今日の予定がある。
《午前 配送》
《屋上 水確認》
《西棟 窓補修》
配送の欄には、直人の名前が書かれていた。
「おはよう」
美咲が子どもを連れてくる。
「昨日、延長しなかったんだって?」
「うん」
「どうだった?」
直人は少し考えた。
「寝た」
美咲が笑う。
「そりゃそうか」
鍋の蓋が鳴った。湯気が漏れる。
直人は空いた椅子を引く。
高校生が隣へ座った。
「変な感じします?」
「何が?」
「朝、店にいないの」
直人は校庭を見る。誰かが洗濯物を干し直している。子どもが廊下を走り、美咲に呼び止められた。
「別に」
端末を開く。
利用時間の表示はない。
代わりに、午前中の配送先が三件並んでいた。
「できたよ」
器が運ばれてくる。
直人は端末を伏せ、椅子を鍋の方へ寄せた。




