↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
181/195

第181話 次の四時間


百八十五日目。


直人の端末が震えた。


《残り三十分》


画面の下には、見慣れた《四時間延長》のボタンがある。


これまでなら、もう押していた。


直人は親指を画面から離した。


カウンターでは、クルーが番号札を受け取っている。隣では長期滞在の男が端末を操作していた。


「延長しないの?」


「まだ決めてない」


「俺はした」


「知ってる」


男は直人の画面を覗く。


「忘れんなよ」


「うん」


直人は入口を見た。


夜の道路は暗い。安全になったわけではない。学校までの道も、明日まで同じとは限らない。


それでも向こうには寝具がある。着替えもある。朝食の時間も、明日の配送も決まっている。


端末を伏せる。


しばらくして、また震えた。


《残り九分》


ボタンはまだ消えていない。


直人は画面を開いたまま、押さなかった。


高校生から連絡が来る。


《明日の箱、もう積んどきました》


《ありがとう》


そこまで打って、直人は指を止めた。


《朝見る》


送信する。


画面に残った自分の文を、もう一度読んだ。


長期滞在の男が毛布を肩まで引き上げる。


「寝るわ」


「おやすみ」


「押すなら忘れんなよ」


直人は笑った。


「うん」


残り時間は四分になっていた。


最初の頃なら、その数字は外へ出るまでの猶予だった。四時間増やせば、そのぶん店内にいられた。


今は、入口の向こうに学校がある。


直人は延長画面を閉じた。


「次は、延長しない」


声にすると、思ったより小さかった。


まだ席を立たない。


期限も来ていない。


厨房から油の音が続く。新しい客が入り、ベルが鳴った。


端末がもう一度震える。


《残り一分》


直人はそれを手のひらに置いたまま、入口を見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。