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165/195

第165話 四か月目


百二十一日目。


高校生は宿泊表へ日付を書き、ペンを止めた。


《百二十一日目》


「四か月か」


直人が横から覗く。


「だいたいな」


「だいたい?」


「月によって日数違うだろ」


「そういう話します?」


「お前が言ったんだろ」


高校生は笑って、昨夜使われた三枚の毛布を畳んだ。


七つある常設寝床のうち、使ったのは三つ。余った枚数はもう数えない。三人分を片づければ朝の仕事は終わる。


起きてきた古参の男に、高校生は言った。


「今日で四か月らしいですよ」


「何が?」


「最初の日から」


男はバーガーを持ったまま少し考える。


「そんな経った?」


「経ったみたいです」


「俺、何日ここいるんだろ」


「数えます?」


「いい」


男は続きを食べた。


その朝、学校から五人来た。


朝食を食べる人。持ち帰る人。コーヒーだけ飲む人。


一人が帰り際に言う。


「午後また来る」


「延長?」


「違う。工具借りた人と待ち合わせ」


「了解」


少しして団地の女が、紙袋を二つ持ってきた。


「これ、学校に渡せる?」


「何です?」


「乾かした野菜。向こうから布もらったから、その分」


高校生は受け取って配送棚へ置く。


「配送に載せます」


「助かる」


女はそのままバーガーを一つ注文した。


昼前には南東から三人来た。その一人は、以前初めて店へ来た女だった。


「また通ったから寄った」


「学校ですか?」


「今日は団地」


「そっちにも行くんだ」


「布見たいって言われて」


女は迷わず席へ座った。


高校生も、もう客として説明する必要を感じなかった。


昼になると客席が埋まった。


前日に戻したテーブルにも三人が座る。壁際の寝床は畳まれたままだ。


店内には十人以上いる。それでも、今夜ここで眠る予定なのは三人だった。


客が引いたあと、高校生は宿泊表の古いページをめくった。


名前で埋まった日。


余白のほとんどない日。


最近のページには、三人、四人、二人、三人。


「減ったなあ」


由佳が後ろから覗く。


「また見てるの?」


「四か月だから」


「何かするの?」


「別に」


「じゃあ閉じれば?」


高校生は素直に閉じた。


午後、朝に待ち合わせを約束していた二人が来た。


工具の寸法を紙へ書き、バーガーを一つずつ食べ、話が済むと出ていく。


配送棚には、団地から預かった紙袋がまだある。


高校生が直人に聞いた。


「今、外で寝てる人の方が多いですよね」


「店に来る人の中では?」


「たぶん」


「じゃあそうなんじゃない」


「ちゃんと数えないんですか」


「必要?」


高校生は少し考えた。


「……別に」


夕食時になると、学校から来た人も、団地から来た人も、南東から来た人も、それぞれ食べて帰っていった。


古参の男が壁際へ毛布を運ぶ。もう二人も自分の寝床を作る。


三つ。


それで終わった。


高校生は宿泊表を開かなかった。


入口のベルが鳴る。


南東から来た女が戻ってきた。朝とは違う布包みを抱えている。


「団地、行ってきた」


「どうでした?」


「これと交換した」


布包みを少し持ち上げる。


「バーガー一個」


高校生が注文票を取る。


女は空いているテーブルへ座った。


壁際では、三枚の毛布が広げられている。


そのどちらにも、高校生は人数を書き足さなかった。

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