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103/122

第103話 仲直りしない夜


四十八日目の夜。


夕食になっても、由佳と森田は別々に座っていた。


由佳は母の隣。森田は窓際。間には三つのテーブルがある。


直人はトレーを持ったまま少し迷い、結局どちらでもない席へ座った。


高校生が隣へ来る。


「まだ喋ってないですか」


「たぶん」


「長いですね」


「朝からだからな」


高校生は森田を見て、由佳を見る。


「仲直りさせないんですか」


「俺が?」


「誰かが」


直人はポテトを一本取った。


「今、誰が行っても嫌がられそう」


由佳が席を立ち、カウンターへ向かった。


「コーヒー」


「かしこまりました」


秩序がカップを用意する。


少し遅れて森田も立った。同じ方向へ歩き、途中で由佳に気づく。


足が止まった。


由佳も気づいた。


二人とも何も言わない。


森田が先に引き返した。


「森田さん、コーヒー買わないんですか」


高校生が聞く。


「あとで」


「今空いてますよ」


「分かってる」


声が硬い。


高校生が直人を見る。直人は首を横に振った。


朝、地図が広がっていた共有テーブルは空いたままだった。誰も座らない。


若い女ももう帰っている。高校生は一度入口を見て、ノートを閉じた。


美咲が由佳の隣へ座った。


「大丈夫?」


由佳は少し黙った。


「大丈夫じゃない」


「うん」


「でも、今は話したくない」


「分かった」


美咲はそれ以上聞かなかった。


子どもがラッキーセットの図鑑を持ってくる。


「これ読んで」


由佳が受け取った。


「どこ?」


「ここ」


ページを開く。喧嘩の話はそこで止まった。


直人は森田の席へ行った。


「隣いい?」


「勝手に」


座っても、しばらく何も言わない。


森田が先に口を開いた。


「俺が悪いって思ってる?」


「分かんない」


「何だよそれ」


「由佳が疲れてたのは分かる。森田も疲れてるんだろ」


「だからって、あんな言い方ある?」


「それは本人に言えよ」


森田は黙った。


「今は言わない」


「うん」


秩序が空いたトレーを下げ、椅子を戻して店内を回る。


「お下げしてよろしいですか?」


由佳の前の空カップを指した。


「お願いします」


「かしこまりました」


森田の前でも同じように聞く。


「いいよ」


「ありがとうございます」


二人に向ける声は同じだった。


夜が深くなると、由佳は母の毛布と自分の毛布を、いつもより少し壁側へ寄せた。


森田は反対側で荷物をまとめる。地図は鞄の中。トランシーバーも出さない。


直人がその間を通っても、二人とも顔を上げなかった。


照明が夜の明るさになる。


高校生が小声で言う。


「明日には普通になってますかね」


直人は二人を見た。


由佳は横になっている。森田はまだ起きている。


「分かんない」


「このままも嫌ですね」


「うん」


「でも、無理に謝らせるのも違うか」


「たぶん」


森田が水を取りに立った。


戻る途中、由佳の寝ている場所の近くを通る。


歩幅が少し遅くなる。


由佳は目を閉じていた。


森田は止まらなかった。


三つのテーブルを越え、自分の場所へ戻る。


カウンターから声がした。


「お次のお客様どうぞー」


直人は毛布へ入った。


由佳は壁側のまま。


森田の地図は鞄の中のまま。


二人の間には、朝から残った三つのテーブルがあった。

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