↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
89/89

89 弱点は一つって誰が言った?

明日も20時目安で更新です

 三日後、馬車乗り場の待ち合わせに着いてみると、浮かれた女子(じょし)三人が居た。

 トランクを持ち、ワンピースやツーピースなど、可愛らしい服を着ている。

 

 もし海水浴がメインの目的なら、麦わら帽子でも持っていそうな雰囲気である。


 流石のオレでも冒険者の時よりお洒落をしているくらいは分かる。アイクの方はと見ると、シャツに黒いトラウザーにブーツを合わせている。性格通り、スッキリサッパリした服装だ。


 オレは安定の店員お勧めルックである。この旅行に行く前に服屋の店員に組み合わせを考えてもらった上で荷物を纏めた。


「じゃあ、行くぞ!」


「おー」


 全員の声が揃う。



 滑り出しは上々、女子三人はガイドブックを見てキャッキャしているし、アイクは文庫本を読んでいる。前に小説読むと言ってたが、確かに暇つぶしには最適だ。


 オレは手持無沙汰で、自分の鞄を漁って数〇をして、時間を潰す事にした。

 数字を正方形のマスに入れて被らないようにするアレだ。

 

 1……7……9……





「酔った……」

 

 開幕10分、オレは〇読を諦めて、半死半生で御者台に出る事にした。吐く3歩手前位だ。

 乗り物で数字はダメだったか……。


「センパイも、足10本以外にも苦手な物って有ったんですねぇ」


 シシリアが馬車の中から御者台へ顔を出して言う。御者の横でグロッキーになってるオレを見て、難しい顔をしていた。そう言えば、シシリアって意外に弱点少ないな。せいぜい海で波に引き込まれた時くらいか? でも、あれも溺れたのか単に水を飲んだのか分からない。更に言えば、人の弱点を一々探るのも品が無いし。


「いつもは、馬車で数字なんて読まないからな」


 手で首元に風を送りながら言うと、ぴとりと冷たい物が頬に当たる。


「ほら、補給しといて下さい」


 どうやら、果実水が入ったコップをウィリスの魔法で冷たくしたらしい。


「有難く貰う」


 冷たい清涼感のある香りが駆け抜ける。

 ふー、少し楽になったぞ。


 後は虚無になって御者台から景色を見るしか無いか。イイテンキダナー。


 オレが見るとは無しにガイドブックをパラパラしていると、横にいる御者が話しかけてくる。


「皆さまは、『コレット』まで行きなさるんで?」


「ああ、観光にな」


「あそこの街も最近は物騒だから、気を付けた方がいいですよ」


「観光地が?」


「説明するのが難しいんで、行ってみれば分かると思いますよ」


 観光地で何かが有ったのなら他の街にも知れ渡ってると思うが、新聞にはそんな記事は書いていなかったぞ? 事と次第によっては、そちらを調べた方が良いかも知れない。


 まあ『行ってみれば分かる』だろう。


 馬車はガタゴトと音を立てながら、観光地『コレット』へ向かっていく。


 馬車が進んでいくにつれて日も沈んできて、夜になってもさざめいていく、観光地特有の夜市のざわざわした音がこちらの方まで伝わってきた。


「はい、お客さん。着きましたよ」


 御者が、馬車の幌を上げて、ステップを付ける。

 先にオレとアイクが下に降り、三人の荷物を受け取ってから降りる手伝いをする。


「おじさん、ここでお勧めの宿屋有る? 出来れば風呂が付いてる所で」


「ふーむ、じゃあ6丁目の『雲雀(ひばり)の止まり木』をお勧めします。宿自体はそこまで大きくは無いが、風呂が広い。この街は海に面しているから、海産物が上手いですよ」


「有難う」


 オレはオヤジに聞いた宿に向かう事にした。



「いらっしゃいませ」


 宿に着くと奥から女性が出てきた。多分中居だろう。着物を着て、帯を締めている。


「2部屋頼めるか」


「はい、空いてございます。ご案内します」


 中居について建物に入ると、落ち着いた雰囲気である。

 着いた旅館は二階建てで、建物の大きさ自体は、そこまででは無いが、建物と同じ程の広さの庭がある。

 建物意外は庭園半分、温泉半分らしい。


 時間的に、本格的に風呂に入るのは飯の後だな。先に体の埃を洗い流す程度にとどめて、部屋に戻った。


 ウィリスの腹の音が、くぅと鳴る。加えてパティの腹もぐうとなった。


 腹の音も個性が出るなぁ。


 泊まる部屋は女と男に分けているが、飯は全員で食べることにした。食事は海産物と言うだけあって刺身が主役だが、おぼろ豆腐の鍋もあり、満足度が高い。


 馬車での粗食からの食事の充実さに全員が顔が綻んでいる。かく言う俺も、しみじみと味わっている。


 他のメンバーはエールを飲み出したが、俺は大人しく炭酸水を飲んでおく。そちらの輪に入りたかったが、体質に合わないので仕方がない。


 この日は食事が終わったら、各部屋に入って自由時間にする。

 その後、俺はふやける程お湯に浸かった事は言うまでもない。


 しかし、そんな幸せな気持ちは、次の日の朝食に崩れ去った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。