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86 再会は砂漠の夜明け

明日も20時更新予定です

 レベルが上がり、全員安心したと思っているだろうが。


「みんな、忘れてると思うが、これは『レベル40になるまで帰れません』合宿だ」


 全員の顔がサーッと青くなる。


「今回の戦闘で、コツが分かったから次はもっと早く倒せると思う。まだまだ行くぞ」


 皆の顔が悲壮になってしまった。


「よし、次々行こう。ほら、シシリア次頼むぞ」


 げんなりした顔でシシリアが、それでも耳を澄まし音を拾う。


 そこからは、蹂躙であった。みんな顔が死にながら、次々と作業的に屠って行く。

 その日はレベル38まで上がった。


 夜は言葉少なにスープに固いパンを浸して食べもしゃもしゃと元気無く食べる。怪我は治しているのだが、精神的な問題なのだろう。


 まだ2レベル有るんだがなあ。


 その日は疲れているという事で、早目に休む事にした。砂漠の夜は冷えるので、女子は三人団子になって寝ている。結界を張っているのだが、何かがぶつかってこないと言えない事も無い。


 ま、特に何も無いだろう。オレとアイクも眠りにつく事にした。




 薄い眠りに落ちていると、何かがピシっと固まった感覚がした。女子の方はと見ると、シシリアだけが起き上がっていた。


 これは……空間が固定されているな。


 これは、以前エルフの森で感じた感覚だ。

 

 その時と同じように虚空に穴が開き、黒い衣装の女がスッと降りてくる。黒いフリルだらけの服は、日本で言う所のゴスロリに似ている。髪も黒いので真っ黒である。


「来たっスね……」


「今度は何の用だ?」


 オレ達が警戒している様子を見て、黒い翼を羽(は)ばたかせながら、指を当てながら赤いリップを隠すように指を一本立てる。


「ここは私が遊び場を作ろうと思っていたのに、あなた達が先に壊しちゃうんだもの。つまんなぁい。今回は壊すほどの物も無いから、普通に遊んでもらおうかしら」


 ここは砂漠だ。多少暴れた所で壊れるものも無い。以前よりは力が出す事が出来るだろう。しかし、相手は力をセーブしなくて良い訳だから、力の均衡がどうなるのか分からない。


 アイクたちを巻き込まないように、ダッシュして岩場から離れる。


 それを見て『あら?』と堕天使が言う。


「そこに居るの、地上の民かしら? この間は放っておいたけど、今回はお友達も一緒に遊んでもらおうかしら」


 あちらは普通の結界しか張っていない。あの空間移動を使われたらどうしようも無い。


「『デヴァイン・ドメイン』」


 神の加護による、神聖魔法で神の領域のシールド魔法をかける。


「ちょっと、遊んでみようと思っただけなのに、何なの! このシールド、強すぎるわ!」


 堕天使は空間移動でオレを通り過ぎ、三人の前に移動して魔法を使うが、オレの魔法の方が強かったようでシールドで弾かれて、『バチバチッ』と火花が生じて反射が生じている。



「『ホーリー・リストラクション』!」


 魔法を食らった堕天使は、一旦(いったん)、体全身を荊(いばら)で覆われたが、それでも一部を女が拘束を破壊し左腕と足を捕らわれている。

 もっと強い魔法を使っても良いが、砂漠で打つと崩れてなだれが起きる可能性も有る。地上では全力で力を振るう事は場所を考えねばならないので難しい。



「ふふ、そこまでするなんて、お兄さん最高。クレリックなんでしょう? あははは! 殆ど攻撃魔法に近いわ」


「『アイス・カーフィッグ(氷の檻)』!」


 シシリアがそれに乗じて、氷の檻で上から逃げられないように捕える。


「……『シンピエス(圧縮)』」


「……っ!!」


「よくもっ!!」


 渾身の力を使ったのか、檻を脱出しても、ぜえぜえと息を切らせて翼もよれよれだ。


「あなた達には、手加減が要らないみたいね……!」


「それなら、こちらも加減出来なくなるな」


 堕天使はチラリとシシリアを見ると、今は不利だと思ったのか、空間に穴を描くとその穴に入っていった。


「次は負けないから」


 空間に体が完全に入る前に、こちらを睨みながら入って行った。

 丁度空間魔法が解け、パリンとガラスが砕けるかのような音がして、時間がまた流れ出す。


「やっぱり来たな」


「来たっスね。最後に不吉な事言ってましたけど」


 二人の時なら良いが、他のメンバーが一緒の時に来られると、一晩寝て、起きたら地形が変わっていたら驚くだろう。アフターフォローが出来る気がしない。


「だが、来るタイミングはこっちには選べないからな。いつ来ても良いように、心積もりだけはしておかないと」


「そうっスね」


 戦闘の疲れでぼうっと立っていると、丁度陽が昇ってきた。

 けれど、オレはシシリアの方を振り向いて言う。


「だからと言って、『レベル40まで帰れません』は変わらないからな」


「うわーーーん!」


 シシリアの声が、夜明けの空に響いた。

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