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81/87

81 嵐の後には何も無し

明日もお昼更新です

 計、きっちりかっちり七日、あれ以降は特に何も起こらず、港へ入る。

 船を降りる時に、船長がトーリに握手を求めた。


「いやー、あなた達のおかげで助かったよ。礼にもならないが、乗船料金をタダにするよ」


 トーリはそれに、爽やかに笑って応える。


「いや、それで構わないよ。じゃあな」


 そうしてオレ達は一歩踏み出し、陸へ上がる。




「一週間程度の船旅で、あんなの出るとは思わなかったッスね」


 乗客と離れたせいか、シシリアがいつもの口調に戻る。


「よく有る事、よく有る事」


「『よく有る事』じゃないっス!人目が有って力をセーブしなきゃいけないのに、普段CランクからAランクに調整するの難しかったんだから!」


 シシリアが、ぽかすかとトーリを殴るが、やつは意に介していない。


「そう言えば、Aランクに上げといたんだな」


 意外だ。こいつは結構面倒くさがりなのに。


「本当はSにしようと思ってたんですけど、もう帰ろうってなったら、そこまで上げなくて良いかなって思っちゃったんですよねぇ」


 やっぱり面倒くさいだけだった。


「あ。ここから1日歩くと、街に着くんで、そこで一泊しましょう」


 くるりと回って、率先してスタスタと行ってしまう。

 何も考えてない風だが、何か考えているのだろうか。……いや。多分、何も考えて無いな。


「ドラゴンが出る所ってどの辺なんだ?」


「この街で一泊して、その次の街まで行って、そこから更に3日歩くと火山に着きます。その火口近くにドラゴンが住み着いているので、そこまで行けば戦えます!」


 喜色満面。

 余程楽しみにしていたと見える。地上の最後の思い出だからな。


 火山が近いせいか気温が高いし、生えている木も、オレ達が活動していた街の周りとは植生が違う。


「我慢できない事は無いけど、少し暑いな」


 オレが軽く汗ばんだ首を拭いていると、前を歩いているトーリが振り返った。


「当たり前ですけど、火山の近くはもっと熱くなりますよ~。シールド魔法期待してますね!」


 確かに、素のままで火口に落ちでもしたら、思い出作りをする前に天国へ逆戻りである。

 地上での「死」は天界の民にはカウントされないのだが、天界に戻ってからの再構成に少し時間がかかる。


 後は、確実に上司が叱責されるし、オレ達も上司からも厳重注意を受けるのだ。恐らく減給になるだろうから、社会人には辛いな。


「オレ達が天界に戻った時の給料の為に、失敗するなよ?」


「あはは、何が起こる訳でもないでしょ」


 こいつ、フラグを立てやがった。


「船に乗ってるのに疲れちゃったっス。宿決めませんか~? って言うより、海の上なら翼で飛んで行っちゃだめだったんスか?」


「あっ、忘れてた」


 トーリはウッカリなどと言っているが、街に降りる場合に少々困る。港や街道は、入って来る人間のチェックをしているから、突如街の中に居ると怪しいので、出入りで引っ掛かる。

 結局は正攻法が一番なのである。


 それにせっかく海を渡ったんだから、飯も本拠地にしている街と違う物が食べたい。やっぱり食は大事だよな。堂々と入って堂々と出ないと気分も悪くなるという物だ。


「まあ、宿はご心配なく。もうお勧めで決めて有るんで。荷物置いて、食事にしましょう。


「はー、まだ足がふわふわするっス」


 シシリアが言葉通りに、足がもつれて、膝がカクンとなったので、慌てて抱える。

 男とは違い、ふわっと清涼な香りが鼻をくすぐった。


 しかし。


「うわ……シシリア軽すぎ。あれだけ食べてるのに……どうなってるんだ」


 オレは思った疑問をそのまま口に出してしまった。それから逃れるようにシシリアがジタバタとする。


「もう!余計なお世話っス!! そういうのセクハラっていうんですよ!?」


「そりゃ悪かった」


「んも~~~! 絶対悪いと思ってませんよね!」


「うんうん、分かってるって」


「セネカさん、俺が聞いてても嘘だって分かるすわ……」


 ぷんすか怒っているシシリアを尻目に、宿屋を探す。一泊だけなので、特にこだわりも無く、小奇麗な場所を探した。


 荷物を置いたら……ご飯だ!!


「この国は、海にも面してるから、海鮮が美味しいんですよ。でも、東には牧草地帯も有るんで、羊料理も有名です! 片っ端から頼みますか?」


「いやいや、食べきれる量しか頼まないぞ」


「まあ、それもそうですね、足りなければ追加オーダーすればいいし。すみませーん!」


 トーリは片手を上げて店員を呼ぶと、素早く店員が来た。


「ご注文は、お決まりですか?」


「とりあえず、海鮮焼きを一通りと羊の腸詰と、ラムステーキ」


「かしこまりましたー!」


 打てば響くようなやり取りをし、オーダーを終わらせると、店員がお冷を持ってくる。

 暑い空気にさらされているので、思ったより喉が渇いていた。一気に飲み干すと、汗が引いてきた。


「俺もこの土地には初めて来たんですけど、やっぱり暑いんですねー」


 そりゃ火山が有るからな。


「その代わり、宿に温泉有るそうですよ! お湯に入るのなんて久々だなあ」


 温泉!!

 こちらに来て、水に入ったのは、精々川くらいだった。


 オレはまだ来ても居ない食べ物を他所に、ソワソワとしてしまう。


 早く! お湯に! 入りたい!!!

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