8 レベル調節装備
もう一話載せます
宿屋に戻っておかみさんを探して肉を渡すと、大喜びで晩御飯に肉を出してくれると言う。買い取ると言われたので、多い分は、せっかくなので相場より安めに設定して、晩御飯を只にしてもらう事になった。
節約出来る所は節約しないと、最初に貰ったバカンス費用が目減りする事は避けたい。明日は槍も買い直さなきゃいけないし、これからも何かと物入りになるだろう。依頼を積極的に受けて金を稼がないとな。明日もギルドに行って、ボードを見なければ。
鞄の荷物を整理しつつ、飯が出来る頃合いを見て、下の酒場におりる。
「お客さん、昼間に持ってきてくれたボアの肉で、薄切り肉を作ったよ! 鉄板焼きのテーブルに座ると良い。ガーリックも要るかい?」
更に色々な部位の肉と、ガーリックが乗って来る。少な目と伝えているので、0.8人前と言ったところだ。オレが満面の笑みで肉を焼きだすと、店の中の空気が肉の匂いでいっぱいになり、タレと相まって何とも言えない空間になる。
肉は厚焼きで、既にサイコロ状に切って有る。多分、冒険者がナイフとフォークを使って食べるような事をしないからだろう。食べやすくはあるので、それはそれで良い。
口に入れると、油が口の中でジュワッと沁みてきて、香ばしい。併せて焼いたガーリックの匂いも後から香って来る。ただひたすらに美味しい。米も出してもらって、一緒に食べると、最高の気分だ。
「おい、おかみ、今日の肉はボアか? 俺にも出してくれ!」
あちらこちらから声が掛かり始めて、酒場の中は焼き肉屋と転じた。
それにつれて、酒場の喧騒も高まっていく。
今日の肉はオレが仕留めて来たものだ、皆の衆よ、味わって食べるが良いぞ。
謎の優越感に浸りながら、桶に水を貰って自分の部屋まで戻ると、体を拭いた後にクリーン魔法をかける。風呂に入れる宿に泊まる事が出来るのはいつの日か。
とりあえずは歯だけ磨いて楽な格好になって布団に入る。この宿屋は、設備こそ古臭いが、シーツが臭いなんて事は無く、毎日気持ちの良い布団で寝る事が出来る。安い宿だが、市場で聞き込みをした甲斐が有ったというものだ。
この日は自分がしとめた獲物を味わうという、圧倒的満足感を感じて気持ち良く眠ることが出来た。
次の日、朝目が覚めて身支度をすると、下の食堂に下りる。食堂は出発する冒険者で、少々混んでいた。その中でオレは簡単に軽い朝食メニューをとり、ギルドに行く事にする。
食堂からギルドは歩いて10分と言う好立地だ。1kmも無い。扉から中に入ると依頼ボードの前には人でごったがえしていた。おそらく、あの冒険者達は装備からすると、中級以降だろうから初級依頼を探すオレとは目的のランクが違うので、依頼を取り合うような事は無い。ラウンジでのんびり待つ事にする。
果実水を飲みながらテーブルで20分くらい待つと、ようやくボードの前が空いてきた。
「初級の採取か、討伐系依頼っと…」
さて、どうするか。採取系を受けて昨日のように何らかのトラブルが有って、またレベルが上がってしまった場合、いくらなんでも怪しい。先に図鑑で調べて目標を定めよう。ツノタチさえレベルは5だった。レベル4辺りの敵を狙うのが良いだろう。
先に図鑑だな。中二階にある本棚に行くと、魔物図鑑を手に取る。レベル4、レベル4……。有った、羽兎。
羽兎とは、体が白く耳が翼のように広がっており、身軽で素早いらしい。しかし、臆病な性格で攻撃力は無い為、初心者にはうってつけだと書いてある。
ふむ、今日のターゲットはこいつだな。
それを踏まえた上で依頼ボードを見ると、羽兎の毛皮5匹分と言うのが有った。よしよし、丁度良く依頼書が有った。おそらく常設依頼なのだと思うが、しばらくはこれでお茶を濁そう。
オレは依頼ボードから紙を外し、窓口へ向かう。
「今日は、この依頼をやりたいんだが」
ギルド嬢は目を通しながら、「安全マージンを取って欲しいんですけどねぇ……」と呟いているが、オレに言っても無駄だと思ったらしい。流石にレベル4でスライム狩りでもないしな。
「ルードヴィヒさん、パーティーを組んだら如何ですか?」
窓口嬢は、そう提案してくる。
「パーティー?」
「レベルが上がるにしたがって、そろそろ取り回しが難しくなります。ルートヴィヒ様はクレリックですし、自分と同じレベルは、あまりお勧め出来ません」
パーティーねぇ。そういう制度が有るのは知ってるが、いざ自分が組んでみるという立場になると、どうもピンと来ない。
「今日の依頼終わってから、考えてみるわ」
オレは依頼受付だけ済ませると、ギルドを後にする。しかし、パーティーってどうやって探せば良いんだ?ギルド内にそんなボードが有ったような、無かったような……?
まあ、それはそれとして、槍を新しく買わないといけない。一昨日の武器屋に、再び行ってみよう。
「槍が折れただぁ? 初級向けとは言え、そんなヤワには作ってねえぞ」
いかにも職人らしい、頑固者が背中からにじみでている武器屋の親父は、渋面を作る。
「昨日レッド・ボアの眉間を砕いたからそれで折れたんだよ」
そうすると、親父は「はぁ」とため息を吐いて、カウンターから出てくる。
「無謀なヤツだな、初級でボアと戦うなんて。そうしたら、一昨日売った程度の槍じゃダメだな」
「たまたまだよ、たまたま」
親父は重さと長さを見比べて、オレに合いそうなやつを選んでいく。
「木の槍でダメなら、次はやっぱり銅の槍だな。長さはこんなもんで良いだろう」
なるほど、武器屋が選んだだけあって、しっくりと手に馴染んでくる。本来のオレの数値からすると軽すぎるが、カモフラージュとしては十分だろう。
武器屋で金を払うと、昨日のように屋台で昼飯を買い、さっさと城門から羽兎の生息地である草原まで、散歩気分で鼻歌を歌いながら歩いて行く。
さあ、一狩り行くぜ!




