79 冒険の爪痕
明日もお昼更新です。
「相談って何だ」
「俺も、この大陸の方々で冒険したんで、そろそろ帰ろうかと思ったんですけど」
「シシリアと、よく途中でぶつからなかったな」
「たまたまっスかね」
「それで、帰る前にどかーんとドラゴンくらいは倒して行こうかと思いまして」
「待て待て、そんな事をこの大陸でやったら、オレとシシリアが目立ちすぎる」
なんでも、トーリが言う事には、彼は50年くらいこの大陸を流れていたらしい。しかし、そろそろ天界へ戻ろうかという事で、何かデカい事を一発どかんとやってから帰ろうと考えたと。
しかし、この大陸だと面が割れているため、海の向こうの大陸に行ってこの世界のモンスター頂点の一つで有るドラゴンを倒そうと思ったとか。
「大胆だなー」
「なので、普通の人間と一緒だと思い切り出来ないでしょう? かといってやりすぎると地形が変わるかもしれないし。カバーして欲しいんです」
「なんで、そんなのに付き合わないといけないっスか」
「だって、もう戻る申告しちゃったもーん」
トーリはシシリアを半目で見る。
地上に居る天界の民は、逆に地上から天界へ戻る時も、先に神像から担当上司に申告しておく必要がある。所謂先ぶれ的な物だ。
トーリは50年冒険者をやっていたのか。それが長いか短いかは、今のオレには分からない。
「しかし、他の大陸に行くとなると、結構長い事ここを離れる事になるな」
「……っスよね」
餞別……と言ってもトーリは天界に戻れば会えない事もない天界の民だ。今の発展途上の『火炎の蕾』を離れる事に不安が有る。ただ、旅の最後に心置きなく帰りたいだろう。
んんんん~~~~。
「どう思う? シシリア」
シシリアの方を見ると、あれだけオーダーしたのに、既に食べ終えていて、口元をナフキンで拭っている。『火炎の蕾』の女子の食欲すごいな。
「そですねー、まあ、帰る時に何かをしておきたいと言うのは、分からなくも無いかも?」
「よっしゃ、シシリア、セネカさんもお願いします!」
シシリアが良いと言うならしょうがないか。パーティーは少しだけ休む事になってしまうが待っていると、トーリが天界に帰る事になる。次はいつバカンスに来れるかは上次第なので、積極的に自分らで、来ることは難しい。
ふう、他のメンバーに話をしてみるか。
食事を奢ってもらい、その日は別れた。
次の日、シシリア達の泊っている宿屋のテーブルで昼飯を食いながら相談をする。
「へー、リアちゃんとセネカさんの後輩が故郷に帰っちゃうんですか」
「思い出作り……」
ウィリスが、ふーふーと緑茶を飲みながら言う。別に一生の別れでもないのだが。
「それなら、その間、僕たちは軽いクエストでも受けておきますよ。レベル差がつかないようにしないといけませんから」
「恩に着るよ」
「それより、どこまで行くんですか?」
そう言えば、具体的な場所とかは聞いてなかったな。
「何か、海の向こうとかしか言ってなかったですよね?」
シシリアがこちらを見て言うが、オレも、まだこの大陸の地図さえ頭に入っていないので、海の向こうなどは猶更である。
「一番近場の大陸は結構敵のレベル高いって話ですよ?」
アイクが焼き鳥を一本食べ、眉を寄せながら言った。
「まあ、オレ達より長く冒険者やってたみたいだから、その辺は大丈夫だと思う。オレらはあくまでも補助だから」
50年こちらに居たという事は、相当なレベルだろう。ドラゴン倒すとか言ってたしな……。
しかし、地形が変わって跡地が何も残らない焦土にならない事を祈るばかりだが、これはトーリ次第だな。
「でも、近場でも大陸に行くとなると、片道一週間以上かかりますよ?そしたら一か月半月以上、い帰って来ない事になりますね」
パティも焼肉を食べながら言う。
「そうなのか。オレ達はくっついて行くだけだから、経費とかは持ってくれるっぽいし、相手任せだな」
そう、トーリは地上を離れるので、地上の硬貨を持っていても仕方が無いという事で、かかる金は全部持ちをしてくれると言うのである。正直、交通費とかあまりにかかるのならどうしようかと思ったが、その心配は無くなった。
「セネカさんとリアちゃんなら平気だと思いますけど、気を付けてね!」
パティが100点の笑顔を向けてくる。
3日後の朝、船乗り場でトーリと待ち合わせをした。いつもの時間に目を覚ますと、下の食堂でオムライスとパンをコーンスープを食べる。
ここの食事とも少しの間お別れだ。
部屋のキープを頼んでから集合場所に行くと、既にトーリが居た。
「セネカさん! 今日からお願いします! 早いですね」
彼は、尻尾をブンブン振っているかのように陽気な雰囲気を強烈に放っている。こんなうるさい雰囲気で、討伐系とかの依頼がこなせてたのか、甚だ疑問では有る。
「シシリアまだなんですかね。先輩がここまで早く来てるのに」
「お前は発案者だから早く来るのは当然だとして、一応シシリアの後輩でもあるんだからそう言ってやるな。時間までまだ有るぞ」
「何か、時間より早く来ないと落ち着かないんですよね」
忘れてた。コイツ結構せっかちだったわ。今まで組んだ冒険者とか、結構苦労してたんじゃないか?
オレと違って、スポーツ系の同好会も積極的に参加していた筈だし。
そんな話をしていると、遠くからシシリアが走ってきた。
「おはようでーす! 暫くは宜しくです」
さて、天界を降りてきて、初めての船旅だ。




