78 山盛りオーダー、ばっちこい
明日もお昼更新です
『それでは、外までご案内致しましょう』
レイスの代表はふわりと先導して先に進んでいく。
「お前たちは天に昇らなくていいのか?」
『私達は永遠のパーティーを楽しんでいます。まだ数百年は宴をしていても構いませんね』
階段を登りながら、若干自嘲気味に、隣を歩いているオレの耳に囁く。
『今、天の使いの方に祓われなくても、気が済んだらお呼びするかもしれません』
「分かった。その時にオレがまだ地上に居るか分からないが、交代をする時には引継ぎをしておく」
『有難うございます』
何度か階段を上り下りして歩かされるとようやく外へ続く扉を指示させられる。
『さあ、こちらからお帰りなさいませ』
男は、普段頭を下げられるべき側の立場の人間だったろうに、軽くおどけてこちらへ会釈してくる。
扉を開けると後ろから押し出される感覚が有り、後ろを見ると、もう扉らしきものは見当たらなかった。
用事が終わったら追い出されちゃうのは、万国共通なのかな。
それにしても、今回はウィリスとアイクの武器が手に入ったし、アクセサリーも手に入った。宝石も手に入ったので、こちらは普通に売りに出して財産に出来る。
今回は財布が潤った攻略であったが、さて。
「それにしても、今回は敵を倒してないからレベルが上がって無いな。次こそ討伐系だな」
「確かにレベル据え置きじゃ困りますね。次は本当に討伐系じゃなけれダメです」
オレの言葉に、アイクが頷く。
「どうせ武器も一新出来たんですから、もっとすごい所に行きましょうよ」
シシリアの発言も、最もだ。
「じゃあ、ギルドに戻ったら、またバインダーで探してみるか。無限沸きみたいな場所が良いな」
「無限沸き……」
ウィリスは、ブルルと震える。
大丈夫だ。ウィリスが考えてるような所だぞ。
いや、良くはないが。
「とにかく、一度は帰ろう。疲れてるしな」
今回は戻ったらいったん解散とする事になった。
馬車はガタガタとタイヤを転がし、街に入った所の終点の馬車停留所で降りる。
「おーい! おーい!」
皆で移動していると、オレは妙に聞き覚えのある声が聞こえて振り返る。
「やっぱり! セネカさんじゃないですか」
「トーリか」
こいつはオレやシシリアと同じ輪廻転生課で、別世界担当の男である。
人懐っこい笑顔を浮かべた子犬のようなヤツで、よく人に菓子を貰っているような奴だった。
ちなみに、シシリアより後輩だ。
「セネカ……とシシリアか、何で一緒なの?」
薄いグリーンと髪の毛はさらりとし、紅の瞳はくりくりとしている。
「冒険者パーティーが一緒なだけだが?」
「リア、知り合い?」
パティが目を瞬かせてトーリを見る。
「故郷で仕事が一緒だった人って言うか……」
流石に二人も同僚が居るとは思わなかっただろう、シシリアも面食らっている。
何で揃いも揃ってこの国に居るの?
オレはいつもこの国のテレビ見てたからだけど。
「ちょっとこの二人、借りて行っていい?」
「え、ええ、まあ」
「ありがとね!」
アイクの返事もそこそこに、オレとシシリアの手首を掴んで走り出す。
「ちょっとトーリ、何するの!」
「おーい、オレらは帰ってきたばっかりだぞー」
そんなオレ達の返事など何のその。その勢いは止まらない。
「帰ってきたばかりだからこそ、捕まえとかないとね!」
そして飲食店に入ったかと思うと、個室を頼んで入って行く。
「炭酸水人数分頼む、その間にオーダー決めるから」
個室に案内してきた店員にそう言うと、部屋に追い立てられる。
オレは、ボーダーコリーに追い立てられる羊か。
「ささ、サクッとオーダー決めてください。話はその後に!」
そう言われれば、何か探すしかない。オーダーしたら話してくれるらしいな。
「んも~、何っスか。こうなったら好きな物頼んじゃうっスからね!」
シシリアが足をジタバタしている。
「うん、いいよぉ。今、懐が温かいからね」
そんなやり取りをしていると、ウェイターがオーダーを取りに入ってきた。
「オレは、ハンバーグライス」
「俺はオムライスとフライドポテトと唐揚げ」
「じゃあ、私は牛の頬肉のブラウンシチューと、ピザと、エビフライと、コーンスープとトマトサラダ!」
「どれだけ食べるんだよ……腹に入るの?」
「入りまーす!」
トーリが呆れながら見ると、シシリアが、つーんと答える。
「って言うか、トーリは私の後輩なのに、口の利き方考えて!」
ウェイターは入ってきた時と同じに、気配も足音も無く下がって行った。
暗殺者か?
料理が運ばれて完全に密室になると、ようやくトーリが話し始めた。
「いやー、目立つ冒険者の話聞いて、絶対二人の事だと思ったんですよね」
「んで、本題は?」
オレはシチューを食べながら話を始める。食後に話しても良いのだが、シシリアのメニューの多さを考えて、早目に話題に入る事にした。
「実は俺、バカンスを終えて天界に戻ろうと思ってるんですけど、その事で相談が有るんです」
トーリは、そう話し始めた。




