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77 宝物庫大解放

明日もお昼更新です。

 階段を降りた先は、ただっぴろい空間になっており、天上も高い。

 しかし、だ。


 階段の下では、沢山のレイスがダンスホールで晩餐会を催していた。

 談笑したり、気ままに踊ったりと、随分楽しそうな様子だ。


「なんだあれ……随分と楽しそうなレイスだな」


「ひっっ……」


 オレの前から、アイクの押し殺した悲鳴が聞こえる。


 そうだね。レイスやアンデット系が出るとは思ったけど、宴が最高潮な華やかな場だとは思わないよね。

 人数(?)は、ざっと見積もっても50は下らない。


 (どうします?)

 (突っ込んで行くしか無いんでしょうか?)

 (火炎魔法は効くでしょうか)

 (僕はここに残っちゃダメですか)

  ((だめにきまってるでしょ!))


 階段の所でコソコソ話をしていると、一体のレイスがこちらに気付く。


『やぁやぁ、生きた人間なんて久しぶりだな』


 一際(ひときわ)立派な服を着た男性の御仁が、こちらに滑るように来る。


『こちらには、何用だい?』


 軽くお辞儀をするようにして、胸に手を置いて近づいて来る。

 後ろはと見れば、四人で団子になっていた。まあ、シシリアは本当なら怖くは無いんだろうけど。


「オレ達は魔法使いが使う杖を探している。ここの遺跡に有ると言う資料を見たのでな」


 そこでレイスはフゥムと首を傾げる。


『確かに宝物庫にそのような物が有ったような?』


「譲ってもらう事は出来るか」


『出来ない事では無いですが……』


 あ、嫌な予感。


『ここのレイス全員と踊って下さるなら、差し上げましょう』


「ダンスが終わるまで帰れません!」かあ。何か、そんな番組有ったね。


 階段から全員降ろして、宴会場に立たせる。アイクは悲壮な顔をしていたが、仲間の為なので頑張って貰う事にして、背中を叩いて気合を入れておいた。


「何か不穏な気配がしたらしたら教えろ。全員祓う」


 アイクはコクコクと頷いて、ギクシャクと奥に行った。


『では、始めようかな』


 レイスの代表が言うと、主(あるじ)無き楽器が、ひとりでに曲を奏でる。


『あら、素敵な方ね、一緒に踊って下さる?』


 一人の女性が進み出て来た。結い上げている金髪は少しくすんで、ドレスは若干くたびれている。それでも生前はさぞかし美人だったと分かる所作だった。


「オレは踊れないんだが……」


『あら、ではエスコートして差し上げるわ。ここに居る人たちは貴族の端くれで、ダンスは女性パート男性パート両方踊れるわよ。あなた達を転ばないように動かすのなんて、訳ないわ!』


 ふふっと蠱惑的(こわくてき)に微笑む。


 ダンスが上手になってもこの先使わないだろうしなぁ……でもウィリスの為にやらないという選択肢は取れない。


『そう、腰に手を当てて引き寄せて……』


 ここでオレは驚く。レイスに触っているのに感触が有るのだ。普通に手を握ることが出来るし、腰に手も添えられる。しかし新鮮なのは3曲までだった。


 50曲だぞ!?

 天界に居た時の体力だったら、天界に魂が戻ってたわ!!


 ただ戦ったり歩くのとは違い、ダンスは使う筋肉が違う。これは明日、体がバッキバキだ。周りを見ても、他のメンバーもギクシャクとしている。彼らも、もう疲れているだろう。


 虚無顔に支配されながら、ただただ踊る。まだか、まだ終わらないのか、いや、耐えろ……!


 じゃんっ♪

 突如曲が終わった。


『やあ、驚いたね。今までに、ここまで出来た冒険者は中々いなかったよ』


 パチパチと拍手をしながらレイスの代表がやってくる。

 ようやく終わったか。気温の高さも有って、汗が玉のように噴き出している。

 足もガクガクだ。


「出来なかった冒険者は、どうなったんだ?」


『ふふ』


 代表は、悪戯っぽい笑みを浮かべる。


『最下層の魔物の口に御案内するか、砂漠をしばらく彷徨ってもらうか、かな』


 こわっ。


 こちらの態度次第では、ダンジョンの難易度が跳ね上がっていたらしい。

 ギルドに有った資料での難易度は、命からがら逃げ帰った、この遺跡の主に気に入られなかった者だったのだろう。


『そうだ、宝物庫だったね。よし、私が案内しよう』


 周りでは、レイスがわいわい騒いでいる。死者特有の悲壮さが無いんだよなぁ。


 オレ達が降りて来た階段とは別に、宴会場の奥の石扉から部屋を出た。


『また、いらしてねー!』


 一番最初に踊った女性が、手を振っている。


 すまないが、もう一回来たくはないかな……。


 歩いてきた道を突き当りまでくると、代表は扉の横にある何某(なにがし)かの石を押すと、部屋いっぱいに財宝が有った。砂が被ってはいるものの、傷一つ無い武器がいくつも有った。宝石も、風呂に入れるくらい有る。……が、こちらは鞄の容量的にそこまでの量は持って帰れないな。


 これはすごい。


「すごいですね……」

 

 ウィリスも驚きの声を上げている。


『ふむ、魔法使いの杖ともなれば、こちらがお勧めですな』


 代表はごそごそと武器を漁り、一本の杖を差し出す。それは先に七色に光る石が嵌(は)め込んである、深いマホガニーの杖だった。


『【鏡岩の杖(かがみいわのつえ)】だ。魔力と素早さが、格段に上がります』


 ウィリスが、ぐっと押し付けられた杖を受け取る。


『ブレスド・アイズ(祝福の目)』


 オレはぼそりと呪文を唱える。

 格段とは曖昧な言い方だが、古代の遺物で有るそれは、薄い膜で覆われて、祝福が覆っている。


 強さは、ざっと今の杖の2倍ほどあるようだ。


『あなた方も、何か必要な物が有るなら持って行っては如何でしょうか』


 レイスの代表が部屋をぐるりと指差して言うと、パティの腰から『真影の剣』が「びよん」と飛び跳ねる。


『拙(せつ)の事は捨てぬよな!? 捨てぬと言ってくれ!』


 意思が有る道具と言うのも考え物だ。わたわたと真影の剣が跳ねている。


「アイクは剣を新しくしておいた方が良くないか? 古代の遺跡だけあって、中々の業物(わざもの)が有るぞ」


「そ、そうですね、何かお勧めの剣は有りますか?」


『これはどうだ? 【エヴィロージアの剣(祝福の剣)】だ。素早さ、力、魔力が上がります』


 アイクは腰が引けてはいるが、魅力的な話なので首だけを出して話を聞いている。


 それは闇に溶けそうな程に黒い剣で、邪悪な雰囲気を醸し出しているのは気のせいだろうか。

 そもそも、レイスに案内された宝物庫で呪われた武器が無いとも限らない。


「おいおい、呪われている武器じゃ無いだろうな」


『お客人にそのような物はお渡ししませんよ、お客人にはね』


 はっはっとレイスの代表は笑う。


『呪われた物も確かに有りますが』


 有るんかい!


 オレが祓(はらい)えば済む話では有るんだが、何故出来るのかと聞かれても、説明するのが難しい。


『その辺のアクセサリーは呪われておりませんので、思い思いにお持ちください』


 代表は、サンプル品を配るかのように配って行く。


 こんなにもらって、後から呪われたりしない?

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