76 落とされて、BF2
明日もお昼更新です。
遺跡の中を、隊列を組みながら進む。アイクは中列にした方が良かっただろうか。
「アイク、真ん中に来るか? オレが殿になってもいいぞ?」
「はいありがとうございます!」
アイクは息継ぎ無しそう言って、さっさと真ん中に収まった。本当にレイス怖いんだね……。遺跡を出るまでにアイクの心臓はもつだろうか。
ところどころ、触ったら崩れそうな壁からは離れて、通路の真ん中を歩く。壁には王国の栄枯盛衰らしき壁画が描かれている。その中に「衰」が描かれているのは皮肉だな。
そろりそろりと歩いていると、足元の砂が持ち上がった。バッと後ろに下がったが、砂から手が出て、こちらの足をしっかりと捕まえていた。砂スライムだ。砂で出来ていて、擬態しており、通りがかる生き物を捕食して生きている。
知らなければ、普通は食われる。
砂だけあって、このスライムは核が見えにくい。普通のスライムなら弱点となる芯とも言うべき「核」を持っているのだ。それが透明であるだけあって、核は丸見えなのだが……。
だからと言って、それは知らなければの話である。
「てい!」
オレは槍で千本刺しにした。核も何も有ったものでは無い。核が見えないなら、核を外さないほど刺せばいいのだ。
めった刺しにした時に核に当たったらしく、スライムはぐにゃあと崩れて行った。
「セネカさん、容赦ないですね……」
「足が無いからな」
ウィリスは若干引いているが、当然と言えよう。
「オレは足が有っても無くてもレイスが怖いのに……」
アイクが、うなだれている。
だが、誰にだって苦手なものはある。
以前の洋館の時も思ったが、この遺跡って実はうちのパーティーとは相性が悪いんじゃないか?
パティもスケルトンが苦手な筈だし。
あれ? もしかして、詰んだ?
いや、パティはレイスが苦手だとは言って無いし、アイクもスケルトンやゾンビが嫌いだとは言って無い。
適材適所でいけば、何とかなる……だろう。
そんなことを思いつつ歩いていると、大きな石板が置いてある部屋に出た。古代文字で有るようだが、この間試験で勉強したばかりなので読める。どちらかと言えば、風化している方が問題だ。
北を向き、南に五歩。
東を向き、西に17歩。
謎かけか?
「セネカすごい! 読めるんですね!」
「スペックが高すぎます……」
パティとウィリスが、やんややんやと褒めてくれるのでシシリアの方はと見ると、目が泳いでいた。
多分、一夜漬けで試験を突破し、速攻脳から漏れ出たのだろう。
勿体ないから忘れるなよ。
「この石碑を信じても物事が解決するかは分からんが……指示通りに動いてみよう」
「北を向いて、南に五歩。東を向き、西に17歩……えっ!?」
その位置を踏むと、突如ガコンと床が抜けて、下の階に落とされた。そして、無情にも落ちて来た天井は閉まってしまう。下が柔らかい砂だったので怪我は負わなかったが、罠かよ!!何でわざわざ石板に書いたの!?
「あー、引っかけですね。必ずしも正解に辿り着けるわけじゃないっていう……」
アイクが砂をはらいながら立ち上がる。
「この先もこれじゃ困りますね」
「全くだ」
オレとアイクが罠について論じていると、シシリアから声がかかる。
「センパイ、ここにも石碑がありますよ」
また引っかけなのだろうか。
朝日が昇る方へ、17歩、歩け
石碑は、そう伝えてくる。更に下に落ちろと言うのだろうか。
「どうする?」
皆を見ると、全員が肩を竦めている。
「どうせ一回落とされた時点でマッピングも用をなしていないなら、もう一回落ちても変わらないんじゃないですか?」
パティが天上を睨みながら言う。
皆して罠にかかったので悔しいのだろう。オレにしてみれば分断されなかっただけ万々歳なのだが。
「仕方ない、落ちたらその先から、もう一回マッピングを始める」
全員が頷いたので、東へと歩を進める。東へ17歩……。
そこで、またもや下の階へ落とされた。
今度は落とされる事を想定して進んだので、全員奇麗に着地している。冒険者なだけあって、流石の反射神経だ。
「また石碑があります……」
北へ31歩
「またか……ここに行って何も無かったら、上に登る階段を探すか」
「はーい」
シシリアだけが元気に返事をする。他のメンバーはと見れば、顔色が悪い。まだ敵は出ていないのだが、出てきた場合は死者であると考えられるので、足が重いのだろう。
しかし、特に行き先が分かる訳でも無いので、石碑がいう通りに進む。
北へ31歩
「ん……ここは落とされないな?」
「でも、石碑が指示してきたのはここなんですよね? 何も無いなんてこと有ります?」
アイクの言葉に、部屋をぐるりと見回す。
そこで床に見つけたのは、砂に埋もれた、スイッチのような一個だけ出っ張った石であった。
「押すぞ」
オレが足でその石を踏むと、ごごごごっと床に階段が現れた。
下に下ろすんだったら、床に二回も落とす事無くない?




