75 ファッションセンス死滅問題
明日もお昼更新です
今日もいつもの時間に目が覚め、もそもそと用意をする。目が覚めるからと言って、いきなりシャッキリ出来る訳でも無いので、のんびりと服を着る。
顔を洗って髪を梳き、身だしなみを整えたら、朝ごはんだ。今日は何を食べようかな。
食堂の今朝のおススメを見ると、サンマの塩焼きと、米、スープ、サラダというメニューだった。
冒険者の為に、米が無料でお代わりできるのが嬉しいね。オレはそこまでは食べないが。
腹がいっぱいになると、腹が落ち着くまで、しばしアイスカフェオレなどを飲んで落ち着く。
うーん、贅沢な時間である。
あまり長居をしても良くないので適当に切り上げて、料金をカウンターに置いて、宿屋を出た。
今日は馬車の乗り場には既に皆揃っていた。女子達も先に来ている。
「あれ、オレ遅れたか?」
「すみません、武器が新しくなると思ったらワクワクしてしまって……リアちゃんとパティちゃん起こしてしまったんです」
意外だな、そういうタイプには見えないのだが。
「それよりセンパイ、何か言う事は無いんですか~?」
「ん???」
オレが必死に頭を回転させていると、アイクが耳打ちしてくる。
「セネカさん、ちゃんと見てください。彼女たちの服装が変わっているでしょ?」
…………?
言われたら? 変わっている? ような?
社内の白衣のデザインだったら新しくなったかの違いが分かるのだが、女子の私服の違いがオレにはよく分からなかった。
「センパイ! どうせ気付いて無かったでしょ! ちゃんと見てください!!」
横からアイクの「あー……」と声が漏れていて、そこでようやく服装が微妙に変わっているのが分かった。弁明させてもらうと、冒険者の服の取扱品は、色が派手ではない上に、そこまでレパートリーが無い。精々フリルや飾り石が付いているくらいだ。都市部ならともかく、地方都市ではあまり幅が無い。
後に聞いた話だと、なんでも、個性を出したい女性冒険者はフリルやビジューやリボンを縫い付けて工夫するらしい。うーん、分からん。
更に、オレは服に関してのセンスが壊滅的に無い。自分の服も、ショップの人間に全部任せるかマネキン買いするくらいの人間なのだ。推して知るべし。
「センパイのアホ!」
そこでシシリアが虫を投げて来た。
「なんだよ、もー……げっっっ!?」
そこには足が沢山有るタイプのモンスターの芋虫だった。
「!!」
シシリアにしてみればただの小さな復讐なのだろうが、こちらはそれどころでは無い。
「ホーリー・リング! ホーリー・リング!! ホーリーリング!!!」
虫は切り刻まれ、魔力をまき散らし、掻き消える。
「シシリア! やっていい事と、悪い事があるだろ」
「そこまで怖がるとは……すみません」
そうは言っても、「てへっ!」と言っていて、反省していそうには見えない。
これは予め虫を捕まえておいたな。
オレは、もやもやとしながら馬車に乗った。
借り馬車で3日、休み休みながら行く。今回は路線の馬車が使えないので、貸し馬車で遺跡の近くまで行ってもらい、帰りは馬車が通っている街道まで出る事にした。余計に一日経ってしまうのだが、そこは仕方が無い。
馬車を降りて歩く事半日、オレ達は遺跡の入り口まで来ていた。
「入口で少しだけ休憩したら入るか」
おれの発言に、皆が荷物を降ろしてお茶の準備をする。
「今回は、オレンジピール入りの紅茶にしますねー」
アイクは今回もお茶の準備をテキパキとしてくれる。
お、おかあさーん!
お茶を飲みながらアイクがウィリスに聞く。
「ここって、どんな敵が出るんですか?」
乾いた砂が舞って、サラサラと砂が舞い、遺跡が今にも崩れそうだった。
「ここはウィルポットの遺跡、かつての王朝の一部です。何でも、かつての魔法都市だったとか。モンスターは古代遺跡お約束のレイス系ですね」
「ひっ」
アイクが座っているのに、器用にも15センチ飛び上がる。
「ほー、真影の剣は何か知らんか?」
真影の剣に水を向けると、楽しそうに喋り始める。今まで出る幕じゃ無くて黙っていたのだろう。
『おお、ここはかつての主が拙を連れて来たところだ! あの頃と比べて随分寂れているようだが……』
「以前来た時は、どうだったんだ?」
『まだ、建物の体をなしていたな』
この状況を見ると、えらい前ですやん。
「建物の中の知識は無いのか?」
真影の剣は、考えるかのようにパティの手から浮いて、くるくると宙で回っている。
『入り口から玉座に行く道しか分からんな。主が王から褒章を賜った時に同行したのみだ。よって、入り口から王の間までしか分からぬ』
剣の主が王宮であちこち案内される訳は無いか。一般の館とは訳が違うしな。
「仕方ない、普通に入り口から探すか」
そう言って建物を改めてみると、デカい。庭も砂が広がっており、遺跡は砂に埋もれそうだ。風で砂が舞ってくるので、スカーフで口元を覆う。
砂に足元を掬われそうになりながら、遺跡の中へ歩を進める。
…………殿でカタカタしているアイクには、頑張ってもらうしかない。




